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痛いところを揉んでも無駄?痛みの原因はどこなのか

痛みの専門家•伊藤和憲先生が伝授する「痛みのセルフケア」<6>

なかなか治らない痛み。それは、実は検討はずれの場所を治療しているのかもしれません。実は、筋肉の痛みのうち、7割は痛い部位と原因の部位が異なっているのです。痛み治療の専門家・明治国際医療大学の伊藤和憲教授に、まだまだ知られていない「痛み」について話を聞きました。

◇    長く治療しても改善しないその痛み。実は検討はずれの場所を治療しているのかも?!

 腰痛や肩痛、膝の痛みなど、治療しているけれど、いっこうに治る気配がない…という悩みを抱えている人は意外と多いのでは。例えば、指にトゲが刺さった場合なら、そのトゲが見えなくても痛い場所がはっきりと分かり、皮膚の痛みは「痛いところ=悪いところ」だと簡単に見つけることができます。しかし、筋肉の場合はそれとは少し異なります。筋肉痛の場合は皮膚のように「この筋繊維が痛い!」とはならず、痛い箇所はどうしても曖昧になってしまいます。
 肩こりや腰痛はいわゆる筋肉に関係する痛みをさす場合が大半ですが、神経や内臓の痛みを見つけるための検査は意外と多くあるのに対し、筋肉の痛みを見つける検査はほとんど存在しません。そして、筋肉の痛みは、実に7割の痛みが原因と異なる場所に発生します。だから、この筋肉が痛いと思って、その部分を揉んだとしてもケアできる確立は理論上3割。長くケアを続けていても、なかなかよくならない理由はこういったところにもあります。

 

◇痛みの本当の原因「トリガーポイント」を見つけることが治療のカギに

 最近、よく耳にする「トリガーポイント」という言葉。トリガーポイントとは、筋肉内にある硬く凝り固まった部分(硬結)に触れる過敏点のことで、直訳すると、「痛みの引き金となる点」という意味です。
 筋肉に過剰な負荷がかかると、その部位の筋肉が損傷し、筋肉痛の状態になります。筋肉への負荷が続き、血行が悪くなると、筋肉が常に収縮した状態になり、痛みを起こす物質が長い間その場所で痛みを発し続けるようになります。その痛みの中心となっているのが、このトリガーポイントです。
 筋肉から発せられた痛みの情報は一度脊髄に集められ、脳へと伝わりますが、脊髄に集められる情報は筋肉からだけのものではありません。そのため、脊髄にいろいろな情報が様々な部位から入ってくることで、脳に伝える時にどの場所からの情報かを間違えることがあります。特に筋肉は他の部位に比べて痛みの情報が少ないため、普段よく痛みを感じている部位がその痛みの発生源だと間違って認識し、痛みの原因がある部位から離れた部位に痛みを生じさせます。つまり、これが痛い場所とトリガーポイントがずれる理由です。
 長年、腰痛に悩んでいた人の痛みの発生源を探ると、実はふくらはぎに原因があったとうことも! 肩こりや腰痛など筋肉が関与する痛みは、こういった可能性も考える必要があります。

 痛みの症状とはなかなか一筋縄ではいかないだけに、様々な角度から痛みの原因を正確に探し出し、治療することがカギになってきます。
 

 

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伊藤 和憲

いとう かずのり

明治国際医療大学教授。鍼灸学博士。全日本鍼灸学会理事。大阪大学医学部生体機能補完医学講座特 認研究員。1972年生まれ。2014年4月、厚生労働省の科学研究費を得て「慢性痛患者のためのセルフケアガイドブック」を作成。明治国際医療大学京都桂川鍼灸院「mythos361」 院長を務め、「はり・きゅう」の治療に当たるとともに、慢性痛患者のためにセルフケアを指導。また、地下鉄サリン事件やJR福知山線脱線事故の被害者の「痛み」ケアにも当たっている。専門家や一般市民に向けて年に50回以上の講演を行なっている。


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  • 2017.01.21