一人ひとりが“見えない世界”を自覚し 新たな働き方を紡ぎあげることが大切【コロナ禍で生活はどう変わったのか(仁藤和良)】
【一個人として考える Vol.2】
自らの仕事、私生活を通じて緊急事態宣言下の2カ月間の自粛生活を「一個人」としてどのように向き合い対処したのか。等身大の問題としてコロナ禍による暮らしの内実を綴っていただいた。
————仁藤さんは、外資系コンサルティング会社でキャリアを積んだ後、人材育成・研修ビジネス業界最大手の会社で、主に従業員1万人以上の企業を顧客とするソリューションプランナーとして活躍。その後、2013年に「幸せの共創」をミッションとして株式会社ビヨンドを起業。SCT(セルフコンフィデンス・テクノロジー)という独自の哲学・技術体系をもとにした「一皮むける研修」プログラム【脚注参照】には定評がある。
コロナ禍で多くの会社員の働き方などビジネス環境の変化による戸惑いを生んだ状況で仁藤さんはどのような対処をしてきたのだろうか。
◼︎新しいビジネス環境での「協働」はまず「対話」から
私は、ビヨンドという人材・組織系コンサルティングファームを経営していますが、ビジネス環境は大きく変わりました。
私たちの働き方もリモートワークが基本に。ところで、リモートワークは、お互いが物理的に離れるため、互いの仕事のプロセスや肌感覚が分かりにくいというコミュニケーション上の制約があります。
今、私たちは「〝互いの目に見えない領域〟が増える中で、いかに協働をするか」という問いに向き合う必要があります。言い換えれば、仕事の成果や段取り等の「見える化」によって仕事の合理面の質を上げる機会ともいえますね。
ここは多くの方が気づいているところだと思います。例えば、入社したばかりの新人にリモートワーク環境で働いてもらわざるを得なかったお客様の職場からは、「新人と上司のコミュニケーションがすれ違い、お互いに負担が増えている」などの声がよく聞かれます。
不足したコミュニケーション、いわば「余白」に気づき互いに修正しやすい環境と違い、リモートワークではそれが難しいため、上司側はより明確に仕事の目的を伝えたり、指示をする必要がありますね。そして同時に新人側も指示受けや報連相をより精細に行わないと互いの認識違いや期待のズレが発生しやすくなります。もっとも、これは環境に依存しないいわば仕事の基本ともいえますね。
一方で盲点になりやすいのは「個々人の感情」や「組織の一体感」など仕事の非合理面。
お恥ずかしい話、弊社でも徐々にメンバー相互に違和感が出てきました。
そこでまず実施したのは「互いの思ってることや感じていることを自由に場に出す対話(ダイアローグ)の場」です。
先日も全メンバーで3時間程度対話を行いました。そこでは、「互いの温度感を感じたいのでリアルに集まりたい」、「いやいや、テクノロジーを活用した解決策を探究すべきでは?」とか、「リモートワークは人の目が気にならず落ち着く」、「いやいや、成長機会を得るという意味では、互いの失敗を見せ合えるリアルな環境が必要では?」、「ひとりなので集中しやすい」、「いやいや、人が集まり働くことをどう考えるのか、オフィスとは何だろう」など、多様な意見が出ました。
弊社も正直発展途上ですし、そして私自身も気づけていないことが多く、うまくいっていない部分もたくさんあります。そんな私たちだからこそ、自分たちが問題現象に向き合い得た生の実感値をもち、それを材料にお客様と血の通った支援ができる会社でありたいと思っています。
まだ人様に偉そうに言える立場ではありませんが、今思っているのは、私たち一人ひとりが他者からは〝見えない世界〟があることを自覚し、場を信じ、感じていることを場に出し、新たな働き方を紡ぎあげること。
今、この非合理面の大切さにあらためて目をむけ続けることが大切なのではないでしょうか。
(『一個人』夏号より構成)
【脚注参考】
仁藤さんの「一皮向ける」研修についてはこちらの記事をご参照ください。
https://www.business-plus.net/interview/1410/729222.shtml
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