【30万に1人の難病・魚鱗癬】「子どもに何か(障害)あるって、よっぽど日頃の行いとか悪いんやろ」の声に・・・若き母が再び見つめた常夜灯
難病を持つ我が子を愛する苦悩と歓び(31)
難病「道化師様魚鱗癬」を患う我が子と若き母の悲しみと苦しみ。「ピエロ」と呼ばれる息子の過酷な病気の事実を出産したばかりの母は、どのように向き合ったのか。『産まれてすぐピエロと呼ばれた息子』の著作を綴った「ピエロの母」が医師から病名を宣告された日、母は我が子の「運命」を感謝しながら「これからの親子の人生を豊かなものにしよう」と新たなる決意をした。
今回は我が子の退院の喜びも束の間、1週間検診で病院の待合で聞こえた何気ない夫婦の会話に傷つけられる若き母の心の痛みと叫びを綴ります。
■再び見つめた常夜灯
近くの病院へ行ってから、5日後。1週間検診のため、入院していた病院へ向かう。この5日間で、もう気持ちは切り替えていた。
そんなことだってある。
辛いことなんて、まだまだこれからだ!!
負けてられない!!
と気持ちを切り替えていた。
いや、切り替えたと思い込ませていた。
いつもの病院までの道、今までお世話になっていた病院、いつもの先生ということもあり、少し安心もしていた。
検診では、家でのケアの仕方などの確認と体重測定を行い、あっという間に終わり、総合受付にて会計の順番を待つため、たくさん並んだベンチの一番後ろに座る。
私の前には、陽(我が子)よりも小さな赤ちゃんを抱いた夫婦が座っていた。
お父さんが赤ちゃんの手や足をずっと触っていて、その様子がとても微笑ましく、私も陽に微笑みかけた。
しかし、しばらくして、聞こえてきた夫婦の会話に、
私は陽へ笑いかけることができなくなってしまった。
お父さん「そーいや、結果どうやったん?」
お母さん「特に異常なかったよ」
お父さん「そうやよな、あるわけないよな~」
お母さん「子どもに何かあるって、よっぽど日頃の行いとか悪いんやろ」
お父さん「先祖がめっちゃ悪人とか!」
お母さん「そやな~」
・・・。
日頃の行い? 先祖が悪人? なにそれ。なんなんそれ。
もちろん、この29年間、嘘偽りなく、常に正しくまっとうに生きてきました! とは胸を張って言えない。
だけど、陽は異常なの?
こうなったのは私の行いのせい?
御先祖様のせい?
勝手なこと言わないで。
言わないで!!
そう直接言うことのできない、私自身も嫌い。
なにもかも嫌だ・・・。
帰りの車の中で、思いきり泣いた。
怒りと悔しさと、心がズキズキと痛くて、涙はしばらく止まらなかった。
とことん泣いてから、家に帰った。
そして夜になり、眠る陽の顔を眺めていると、色んな想いが頭の中を埋め尽くした。
いつかは私を責める日がくるのかな、
「どうしてこんな身体で産んだんだ!」って・・・。
これから先も治ることはない、その現実がもどかしくて、
陽の未来が、不安でたまらなくて・・・
私たちの未来が・・・・・・怖い。
今からそんなこと考えたって、しょうがないのに・・・。
そう、しょうがない。
誰も助けてなんかくれない。
でも辛いのは私だけじゃない。
これから先、1番苦しく辛い想いをするのは、私じゃない。
陽自身。
その時に、私はちゃんと守れるの?
わからない。
もう、わからない・・・。
グッと声を押し殺して、この日も布団の中で、再び常夜灯を見つめながら、涙を流した。しかし、こんなこと、まだまだ序の口だなんて、この時には気付くこともできなかった。
(『産まれてすぐピエロと呼ばれた息子』より)
【参考資料】
本書をもとにCBCテレビ『チャント』にて「ピエロと呼ばれた息子」 追跡X~道化師様魚鱗癬との闘い(6月26日17時25分より)が放送されました。
https://locipo.jp/creative/41a0b114-7ee7-4f24-976c-e84f30d2b379?list=5a767e90-3ff9-479c-a641-e72e77cf42c3
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【参考文献】
『産まれてすぐピエロと呼ばれた息子』(アメーバブログ)
産まれてすぐピエロと呼ばれた息子(書籍)
ピエロの母
本書で届けるのは「道化師様魚鱗癬(どうけしようぎょりんせん)」という、
50~100万人に1人の難病に立ち向かう、
親と子のありえないような本当の話です。
「少しでも多くの方に、この難病を知っていただきたい」
このような気持ちから母親は、
息子の陽(よう)君が生後6カ月の頃から慣れないブログを始め、
彼が2歳になった今、ブログの内容を一冊にまとめました。
陽君を実際に担当した主治医の証言や、
皮膚科の専門医による「魚鱗癬」についての解説も収録されています。
また出版にあたって、推薦文を乙武洋匡氏など、
障害を持つ方の著名人に執筆してもらいました。
障害の子供を持つ多くのご両親を励ます愛情の詰まった1冊です。
涙を誘う文体が感動を誘います。
ぜひ読んでください。