【「こども庁」はどうなる?】「骨太の方針2021」から読み解く政府の本気度
第83回 学校と教員に何が起こっているのか -教育現場の働き方改革を追う-
「こども庁」新設について話題になることが増えてきている。しかし、文科省解体にもつながりかねない、このような大改革は本当に実現可能なのか。そして、政府にその覚悟はあるのだろうか。先ごろ閣議決定された「骨太の方針2021」を読み解いていきたい。
■誰が何を目的として構想したのか
6月18日、「骨太の方針2021」が閣議決定された。正式名称は「経済財政運営と改革の基本方針」であり、菅義偉内閣としては初めてのものとなる。
そこに、かつて本連載でも取り上げたことのある「子ども庁」が盛り込まれた。しかし、骨太の方針は案としては後退している印象があるため、選挙対策のために盛り込まれたとの見方も強い。子どものためにならないものになってしまうのならば、残念としか言いようがない。
菅義偉首相が首相官邸で自民党の二階俊博幹事長らと会談し、子育て政策などについて省庁横断で取り組むこども庁の創設について、党総裁の直属の機関を新たに設けて議論を進めるよう指示したのは4月1日のことだった。
そして13日には、「『こども・若者』輝く未来創造本部」が自民党内に発足し、本部長には二階氏が就いた。
党内の実力者である二階氏がトップになったことで関心を集めたのは事実である。しかし、一方では「結局はアドバルーンだけで終わる」という見方もあった。時間とともに、後者の見方が強くなっていく。
こども庁の案が菅首相に持ち込まれたのは、4月1日の朝である。つまり、菅首相が二階氏に指示を出す朝のことだった。
持ち込んだのは自民党の若手議員の勉強会メンバーである。自見英子参議員(前厚労政務官)など当選4回以下の自民党議員30人が呼びかけて発足した「子ども行政の在り方勉強会」のメンバーで、起ち上がったのは今年2月上旬のことだった。
会合は週1回ほどのペースで開かれ、3月16日には早くもこども庁創設を求める緊急提言案を発表している。これを元に菅首相に提言書として手渡され、即決されて、その日のうちに二階氏に指示されたわけだ。
あまりにも性急すぎる動きであり、内容がしっかり練られていたとは考えにくい。実際、菅首相が二階氏に指示を出した翌日に、勉強会の主要メンバーである山田太郎参議員がインターネットテレビの番組に出演し、「まずは、起ち上げて離陸させる。仏つくって、(それから)魂を入れていく議論をするのがプロセスとしていいと考えている」と語っている。
とりあえず、起ち上げてから中身は議論すればいい、というわけだ。なんとも乱暴なもので、菅首相に手渡した提案書の中身も薄いものだったことが想像できる。
ただし、話題にはなる。若手議員の勉強会が構想していたこども庁は、子どもに関連する政策を一元的に扱う庁を新設するというものだった。
現在は、文部科学省(文科省)、厚生労働省(厚労省)、内閣府などに分散されている。たとえば同じ就学前の子どもを預かる施設でも、幼稚園は文科省、保育園は厚労省、認可こども園は内閣府と管轄が分かれているという具合である。これを、こども庁に統合しようというのである。縦割りの弊害を取り除こうというわけだが、これは簡単なことではない。各省庁にすれば権限を失うことになるからだ。
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