新型パンターにかけられた期待!パンツァートルッペン、巨大突出部を食い千切れ! |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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新型パンターにかけられた期待!パンツァートルッペン、巨大突出部を食い千切れ!

第2次世界大戦 戦車戦小史①

■「バック・フロント」

 

 かような事情により、ツィタデレ作戦の発動は拠点確保の必要があった南方軍集団戦区(下顎)で7月4日、中央軍集団戦区(上顎)と戦線全域では5日となった。

 だがソ連側は、スパイや捕虜の情報によりドイツ側の攻勢の場所と時期を把握しており、クルスク突出部全体の外縁と、その内側を積層化のうえさらに細かく仕切るような形で、堅固な縦深防御陣地を構築して待ち構えていた。これは野戦築城史上に名を残す優れた陣地で、ドイツ軍はパック・フロントと称した。

 外周に防御用地雷原が敷設された縦深複合構造を備える陣地帯に、76.2mm師団砲(拙稿『駆逐戦車、突撃砲、自走砲~機甲戦を支えた「戦車殺し」の強力な助っ人たち第3回:ドイツ製の主要部分が皆無…でも最強。対戦車自走砲「マルダーIII」の皮肉(2018年07月18日)』参照)、57mmと45mmの対戦車砲などを相互援護が可能で、複数の砲が同一の目標を射撃できるように配置。それに加えて、多数の14.5mm対戦車ライフル銃と、対戦車用の手榴弾や地雷を所持し近接対戦車戦が可能な歩兵部隊が守備に就いたものだ。ちなみに、パック・フロントや戦車の落とし穴である対戦車壕を含めて、戦場となるクルスクの突出部一帯には、一説では約1万km以上にも及ぶ各種の壕類が掘削されたという。

 やがてこのパック・フロントに、ドイツが誇るパンツァートルッペン(装甲部隊)が正面からぶつかってきた。かくして、「黒十字」と「赤星」の鋼鉄の猛獣たちは、クルスクの地において猛々しい咆哮をあげたのである。

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白石 光

しらいし ひかる

戦史研究家。1969年、東京都生まれ。戦車、航空機、艦船などの兵器をはじめ、戦術、作戦に関する造詣も深い。主な著書に『図解マスター・戦車』(学研パブリック)、『真珠湾奇襲1941.12.8』(大日本絵画)など。


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