「女の子だってヒーローになれる」『HUGっと!プリキュア』が提示する新しい価値観 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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「女の子だってヒーローになれる」『HUGっと!プリキュア』が提示する新しい価値観

アニメといえばいまだにガンダムかエヴァな人のためのアニメガイド

■母親になっても「なりたい自分」を諦めなくて良い

 本作の主要テーマとして掲げられているのは「育児」「仕事」「出産」です。
 物語は、はなが未来から来た不思議な赤ちゃん・はぐたんと出会うところから始まり、はぐたんの成長をはなたちが見守りながら進行します。でも、HUGプリでは「母親はこうあるべし」という姿を押し付けることはありません。はなの母親は記者として働いています。多忙な中でも、はなが学校でいじめられたことに気づき「はなは間違っていない!」と寄り添うことで、母親として娘を支えました。

 プリキュアの一人・薬師寺さあやの母親は大女優として芸能界で活躍中です。第44話では、子役として活躍するさあやと母親が共演するエピソードが描かれました。母親は女優として活躍しながら出産、育児をして、時には周囲から無理だと言われても、幼いさあやを保育所に預けずに女手一つで育児をしてきました。

 

 さあやは当初、母の姿に憧れて女優を目指していましたが、職業体験で見学
した医者を目指すようになります。見学した産婦人科では、帝王切開での出産
を控えた妊婦がいました。妊婦にとって二番目の子供でしたが、最初の子供の
時は育児に不慣れで失敗ばかりと感じていたため、今度こそ完璧な子育を……と思っていたところ、帝王切開での出産となったことで「最初からつまづいてしまった」と引け目を感じていたのです。しかし、産婦人科医は妊婦にこう言いました。「帝王切開はつまづきじゃない。立派なお産よ」
 最終回ではなんと、未来で大人になったはなが出産するシーンが描かれます。しかも、お産の痛みの叫び声も含めてかなり生々しく描写されています。

 本作に登場する母親は皆、多忙な仕事に追われていたり、どこか抜けていておっちょこちょいだったりと、従来の母親像からすれば完璧ではないのかもしれません。でも、はながはぐたんと出会ったように、女性はある日突然に母親になってしまうものではないでしょうか。 

 働きながらでも、上手くいかないことがたくさんあっても、周囲の人たちと支え合いながら、力を合わせて育児をしていく。そんな母親に対して、子供から「生んでくれてありがとう」「ママだいすき」と伝えられるシーンでは、子供たちと一緒に視聴していたお母さんたちも号泣したはずです。母親になったって、完璧な母親にならなくても良い。「なりたい自分」を諦めなくても良い。
 本作には、そんなメッセージが込められているのではないでしょうか。

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小鹿 雪

こじか ゆき

文筆家。アニメやアニメに関わる物事について、思ったことを書いていきます。


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