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跳び箱に引かれた3本の線。そこにあった「学びを面白くする」ヒント

生徒たちが主体的に授業に参加し、思考する重要性

 

■跳び箱の上に引かれた3本の線

「体育の跳び箱の授業なんですけど、まず生徒たちがやってみて、次に見本のビデオを見せるんですね。従来なら、それを教員が説明して、『こうやりなさい』って教えるわけです。ところが、その授業では、教員が説明するのではなくて、生徒同士に『どうしたら、うまくできるか』を話し合わせているんですね。それで子どもたちが、自分の経験と見本のビデオとを比べて、どこが違っているか、どうしたらいいか、いろいろ意見をだしあっているんです」

 さらに、高橋校長の話は続く。

「跳び箱の上に、赤、青、黄のビニールテープで3本の線が引いてあるんです。従来なら、線は1本ですよ。そして教員は、『この線に手をつきなさい』と指導します。全員に同じところに手をつくように指導するんです」

 しかし、その授業は違ったのだ。

「同じクラスであっても、それぞれ体格も違うし、能力も違うんですね。だから、みんなが同じ線でいいわけがないんです。だから、線は3本なんです。でも、どこの線を選ぶのは子どもたちで、アドバイスするのも子どもたちです。『黄色がいいんじゃないかな』『青のほうがいいかも』『やっぱり黄色だよ』とか言い合いながら、何回も何回も飛んでいるんです。その運動量だけでもビックリしました」

 子どもたちが何回も何回も飛ぶのは、「楽しい」からである。自分に合った飛び方を見つけることが楽しいからだ。だから、飛び方を身につけるのも早い。

 従来の誰もが同じところに手をつくように強制するような指導では、楽しいはずがない。そもそも、自分に合っていない飛び方では上達もしない。楽しくない。とても、何回も何回も飛ぼうとはおもわない。飛べないままで終わるだけでなく、体育嫌いになってしまう可能性も高い。

 そんな授業が、全国的に当たり前のように行われてきたのだ。それを変えようとしているのが、三好教育長の「学びは面白い!」なのだ。

 それには、まず変わらなければならないのは教員自身である。高橋校長が、さらに説明した。

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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