横浜ベイエリアの秘境路線(?) 鶴見線散歩
乗客もまばら、無人駅だらけの不思議な鉄道空間へ
浅野駅でも途中下車して、海芝浦方面への扇形のホームや時代がかった上屋を観察したあと、後続の鶴見行きに乗り、いよいよ国道駅の訪問である。車内には、鉄道ファンらしい人が何人か乗っていたけれど、国道駅で降りたのは私一人だった。上り線と下り線の相対するホームをつなぐ弧を描いたような形の鉄柱が芸術的だ。電車を見送って、ホームを子細に観察したあと、階下へ降りようと出口を探すと、鶴見寄りの一番端に小さく口を開けて待っていた。今どき珍しく細い階段だけでエレベータもエスカレータもない。降りていくと、下は薄暗いところで、すぐに踊り場がある。階下の商店街をまたぐ通路を渡って一旦は下りホーム下に出て、さらに、やや急な階段を下りると改札口があった。無人駅なので人影はなく、簡易改札機が置いてあるのみ。Suicaをタッチして外へ出た。
薄暗い高架下の商店街は、アーチ状の柱で支えられ、開業当時はモダンな装いだったのであろう。今なお80年ほど前の昭和初期の空気が時の流れから置き去りになったまま残っているようだ。飲み屋の看板があるけれど、お店は閉まっていた。夕方になると開店するのだろうか。お昼前では人の姿はなく、ゴーストタウンのように寂しい。高架下をひととおり往復して、鶴見寄りの出口から外へ出ると、そこは車が行きかう国道15号(第一京浜)だった。
一気に過去から現代にタイムマシンで戻ってきたかのような錯覚に囚われた。もう一度うらぶれたような過去に戻る気がしないので、ぶらぶら鶴見方面へ歩きだした。10分程で鶴見駅前に到着すると、もうそこは首都圏の賑やかな駅前風景が広がる。ほんの僅かな時間ではあったが、距離的にも時間的にも遠いところへ行っていたような不思議な散策であった。
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