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著者×担当編集者が語り合う“ひきこもりの問題”-今ひきこもりの君へおくる踏み出す勇気-

「非ひきこもりの君」にも知ってほしい「ひきこもり」のこと

「非ひきこもりの君」に知ってほしいこと

●山)──先生を訪ねてきたひきこもりの方に、最初に伝えることって言うのはどういった事ですか?

■吉)──基本は「環境を変える」ですね。

●山)──親子のパターンは多いのでしょうか?

■吉)──連れて来れないですよね。親御さんは一生懸命になっているんだけど、子供の内面をどうにかしたいと思っても行動が起こらない。

●山)──親御さんは子供に対する「罪悪感」を持っているものですか?

■吉)──そうですね。親側の問題ではないと薄々は思ってるんだけど、罪悪感ゆえにその一言が言えないでいるんですよね。結果、長期化している。あとは共依存関係。ダメな息子に尽くすことによって親が自己の存在証明をし、表面的には「困っている」と言うけれども、実は「子供が家に引きこもっている状態が最適だよね」って言う人も存在します。

●山)──この本ではそっちじゃない生きる道を探したほうがいいんですよって話を伝えたかったんです。それがスモールステップだと思ったんですね。変な言い方かもしれませんが「適正じゃなかった」。そこが不幸の源なのかなと思いましたね。

■吉)──社会的な理念や常識が後押しする形でスモールステップや適切な環境って言うのを見出せなくなってしまっている。そして親と子が見つめ合ってズブズブの状態になってしまっている。

●山)──「常識」は想像以上に我々の中に染み込んでいるものですからね…。ところで先生は、家族のような集団行動よりも、一個人で生きていく方が楽なんでしたっけ。

■吉)──そうですね。発達障害の人って「人嫌い」って言われていたんです。アスペルガーとか自閉症の人。でも、そうでもないんですよ。「人好きなんだけど、一人が好きなんですよね」って言う矛盾があって。西野カナ的なめんどくさい感じなんですけど(笑)。
アスペルガー的な視点で言うと、自分のスペースを害されること、劣等感を刺激されるのが嫌というのがありますね。

●山)──劣等感というのは?

■吉)──ここでいう劣等感は相対評価ではなく対人緊張だったりします。「あの発言で嫌われちゃったのかな?」とか気にしてしまうような繊細な人。こういう特性があるからアスペルガーやADHDの人はあまり人と接したがらない。いまは自己完結できるエンターテイメントが増えてきているので、その傾向はより加速していますよね。

 

●山)──本書は多くの方に読んでほしいと思うのですが、タイトルにある「君」たちって本を読んでくれると思いますか?

■吉)──あまりにもひどい状態でなければ、もしくは、ある程度苦しんだけども軽度のひきこもりの場合は、大半の人がもがいています。もがいているから情報収集は誰よりもやっている。だから本も読み漁っているんですよね。

●山)──苦しいからなんとかしたいと思っている。そうやって情報を集めて、客観的に判断して自分を相対化できる時って問題解決につながるチャンスです。そして、そこで踏み出せるかどうかなんですよね。ひきこもりって実は誰もが陥る可能性がある。きっかけさえあれば。元あった自分の気質に気づかされる。

■吉)──そうですね。

●山)──こんな人に読んで欲しいっていう読者はいますか?

■吉)──当事者や関係者の人には当然読んで欲しいのですが、当事者よりも世間一般の人に伝えたいですね。発達障害の人が発達障害について理解を深めたとしても世間一般の人が理解してくれないと、自分にとって最適な環境を構築するのが難しいんです。極端な事を云うと当事者よりも一般の人に読んでほしいですね。

●山)──今回、先生の本を編集していて、むしろ「ひきこもることは異常だよ」って言う考え方自体がおかしいと感じました。

■吉)──そうですね。それでひきこもりの人たちがこじれちゃっている所もある。

●山)──会社とか学歴とか、自分から属性を取ったときに一個人として見たら、みんな弱いからねっていうことを言っている。いつでも落ちるよと。そもそも「定型発達」っていうのがあるのかなっていうのは感じてましたね。先生はどうですか? 

■吉)──基本的には定型も発達もないんですけど、ある程度の分類は「対称」ができるので必要かなと思います。そういった意味で定形と発達は分けてもいいよねってことです。

●山)──集団的にそうなりたいという願望なのかなとも思いますし、かといって発達障害がすごい異端であるかっていうとそんなことはないなっていう。「君へ贈る」という言葉に「あ、これは自分向けじゃない」と思っている人たちにこそ届けたいですね。

■吉)──ひきこもりを否定するのではなくて、活かす方向でアドバイスをしていますしね。

●山)──先生が言われたきた言葉がつながった気がしました。「引きこもりが…」って言うよりも自分はひきこもりと関係ないよって言っている人たちにも大いに関係ある問題だっていうのが、この表紙の逆光のように太陽に映し出されるってことですね。
 先生の言葉でこの本の要約をすると、どのように言えるでしょうか?

■吉)──1つ目は「ひきこもり=いけないことではない」ということ。2つ目は同じく「才能の一部の表れに過ぎない」ということ。3つ目は「その才能を活かしながら、外で活動できる側面をつくろう」ということ。4つ目は「君たちの生きづらさは環境にも原因があり、才能が活かせる環境に出会っていないだけかもしれない」ということ。5つ目は「何年経っても改善できる」ということ。そして、6つ目は「ひきこもりの解決は当人や関係者だけじゃなくて、社会全体が方法と認識を共有することによって初めて成り立つ」ということです。
 そのためには、関係がないと思っている人たちにも読んで欲しいですね。

●山)──同感です。今日はありがとうございました。


 
 
 

KEYWORDS:

『今ひきこもりの君へおくる 踏み出す勇気』
著◉吉濱 ツトム(発達障害カウンセラー)

 

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吉濱ツトム

よしはま つとむ

発達障害カウンセラー

発達障害カウンセラー。幼い頃より自閉症、アスベルガーとして悩み、長期間にわたる「ひきこもり」を経験。悲惨な青春時代を歩むが、自ら発達障害の知識の習得に取り組み、あらゆる改善法を研究し、実践した結果、数年で典型的な症状が半減。26 歳で社会復帰。以後、自らの体験をもとに知識と方法を体系化し、カウンセラーとなる。同じ症状に悩み人たちが口コミで相談に訪れるようになり、相談者数は 2000 人を超える。現在、個人セッションのほか、教育、医療、企業、NPO、公的機関からの相談を受けている。著書に『アスベルガーとして楽しく生きる』(星雲舎)、『隠れアスベルガーという才能』(KK ベストセラーズ)、『発達障害に人のための上手に「人付き合い」ができるようになる本』(実務教育出版)がある。

 

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