青春の終わりに心から言える「ここに来てよかった!」
―精華女子吹奏楽部の最高の三年間―
やりきった少女たちの想いと物語
―精華女子高等学校のコトバ
青春の終わりに心からあふれるコトバ
3年間やり遂げた達成感
精華女子高等学校吹奏楽部
【写真左上から時計まわりに】髙木美雨さん(3年・トランペット)、生野みさとさん(3年・チューバ)、木部冬羽さん(3年・テナーサックス)、橋村桃子さん(3年・パーカッション)
[2019年3月取材]
■青春の終わりに心から言える「ここに来てよかった!」
2018年度の精華のマーチングチームは順調に九州大会を抜け、11月18日の全日本マーチングコンテストに駒を進めた。
ところが、全国大会を前にして、またもや部内でトラブルが勃発した。その中心にいたのは、トランペットの「ミユ」こと髙木美雨だった。
実は、全国大会を控え、マーチングリーダー・テナーサックス担当の「フユウ」こと木部冬羽ともうひとりのマーチングリーダーはさらにショーのクオリティを上げるため、オーディションを行うことに決めた。各パートからひとりずつ選び、最初から最後まで演奏・演技を行う、という内容だ。こうすればきちんとできていない箇所がはっきりするが、やる側には大きなプレッシャーがかかる。
「これ、本当にやったほうがいいんかな?」
フユウたちは悩んだが、決行することにした。
結果的には狙いどおりに問題点があぶり出されたが、そのせいでメンバーのテンションが下がってしまった。さらに、各パートで話し合いをしている最中、トランペットパートで争いが起こった。
ミユは、同じパートのメンバーに少し手を抜くような態度が見えたのが我慢ならなかった。
「これから全国大会に行くメンバーが、そんなんでいいと!?」
思わずミユは声を荒らげたが、相手は聞く耳を持とうとしなかった。
「なんで無視するとよ!」
トランペットパートの険悪な雰囲気は全体に暗い影を落とした。マーチングリーダーのフユウはハラハラしていたし、「どうしたらいいんやろ……」と思った。しかし、ミユが言っていることは正しかった。
「ここからやな。これをプラスに変えるように持っていこ」
フユウはそう思った。
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著者:オザワ部長
現在、実際に演奏活動を行っている人だけでも国内に100万人以上。国民の10人に1人が経験者だと言われているのが吹奏楽です。国内のどの街を訪れても必ず学校で吹奏楽部が活動しており、吹奏楽団が存在しているのは、世界的に見ても日本くらいのものではないでしょうか。
そんな「吹奏楽大国」の日本でもっとも注目を集めているのは、高校の吹奏楽部です。
「吹奏楽の甲子園」と呼ばれる全日本吹奏楽コンクール全国大会を目指す青春のサウンドには、多くの人が魅了され、感動の涙を流します。高校吹奏楽は、吹奏楽界の華と言ってもいいでしょう。
もちろん、プロをもうならせるような演奏を作り上げるためには日々の厳しい練習(楽しいこともたくさんありますが)をこなす必要があります。大人数ゆえに、人間関係の難しさもあります。そして、いよいよ心が折れそうになったとき、彼らを救ってくれる「コトバ」があります。
《謙虚の心 感謝の心 自信を持って生きなさい。》
《コツコツはカツコツだ》
《すべては「人」のために!》
それらのコトバは、尊敬する顧問が語ってくれたことだったり、両親や友人からの励ましだったり、部員みんなで決めたスローガンだったりします。
本書では、高校吹奏楽の頂点を目指して毎日ひたむきに努力しながら、彼らが胸に秘めている「コトバ」の数々を切り口にし、その青春の物語を引き出しました。すると、通常の取材とは少し違った物語「アナザーストーリー」が浮かび上がってきました。
ぜひ中高生から大人までが共感できる、純粋でまぶしい「コトバ」と「ストーリー」をお読みください。