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「男性脳」28歳女子、男性とフツーに話すことが嫉妬となり「エッチ好き」という噂を立てられ、退職

「男性脳」をもつ女子の悲劇:発達障害とひきこもり克服の実例

ガールズトークが苦手、でも「男性脳」女子だから男性との会話は苦にならない。その長所が会社では逆回り! 同僚からは知らぬ間に嫉妬から憎悪へ、しまいには「好色魔」と良からぬ噂まで立てられイジメを受ける始末。次第に孤立化し、退職、ひきこもりへ。周りの空気を読めない悲劇をどう克服したのか。『今ひきこもりの君へおくる 踏み出す勇気』の著者、吉濱ツトム氏の個人セッション実例ドキュメントです。

◆「男性脳」の女子、ADHDに気づかず、完全に孤立
(女性28歳/ひきこもり歴5年)

 Dさんは、自分が女性でありながら女同士の雑談、いわゆる「ガールズトーク」を苦手としていました。読者の方の周りにも女同士よりも男性のほうがしゃべりやすいという人がいるのではないでしょうか。
 しかしDさんが問題なのは「苦手なのに自覚がない」こと。これは自覚がないためにひきこもりへと転落してしまったというケースです。

 学生時代は、単独で行動することがほとんどで、図書館でひとり本を読み、映画を観るのもひとり、食事もひとり。会社に入ってからも、帰宅の途中で行きつけの飲み屋に寄り、そこでたまたま隣になった人(主に男性)とおしゃべりを楽しむ。そんな「おひとり様」が日常でした。
 Dさんは、軽度のADHD(多動・衝動性優位型)が入った女性。よく見られる典型的な症状で、発言や行動が男気質、空気を読みながら相手に合わせて会話をするのが苦手です。着地点のないガールズトーク(雑談)などはいったい何がおもしろいのかさっぱりわかりません。
 たとえば噂話で盛り上がる女子たち。

「あのふたりってちょっとアヤシイよね」
「そうそう。この前、私、ふたりで歩いてるの見た!」

 こんな時にDさんは内心でバカバカしい話だなあと思いながら「だから何?」と口に出してしまうことも。
  または、女性同士が買ったばかりのキャラクターグッズを見ながら「カワイイ~」などと話をしていても、まったく興味が持てないため、横目でちらっと見ただけで近くに寄っていくことはありません。たいていの女性ならばあまり興味がなくても、多少のサービス精神で「私にも見せて」と仲間に加わっていきます。これは敵意を持っていないことを表現する女性特有の手段であり、女性同士のコミュニティを保とうとする“女性の能力”でもあります。

 太古から女性は集団行動を常とし、独特の感受性によって多くの情報を得ながら相手の様子を探り、その集団のバランスが取れているかどうかを確認する習性=脳機能が備わっていると考えられます。
 社内の女性社員からは、入社当時から「なんか話しにくい」、「クール過ぎる」と思われていたようですが、徐々にそれだけでは済まなくなりました。Dさんはガールズトークは苦手でも、男性との会話ならば極めて上手にできます。それゆえに反感を買ってしまったのです。相手の男性も楽しそうにDさんの話を聞く、Dさん自身も相手が男性だと気の利いた会話ができるので、どうしても男性との交流ばかりになってしまいます。
 Dさん本人は決して男性にモテたいからそのような行動をしているわけではなく、単純に男性とは話しやすいから話しているだけなのです。
 そうとはいえ、周囲の女性からはDさんが男性に媚こびを売っているようにしか見えません。
 そしてDさんは化粧っ気のない“隠れ美人”でもありました。ファッションにもこだわりがなく、それが逆に清潔感があって男性からの好感度は高かったのです。
 こうしたことがますます女性たちの嫉妬心を煽あおり、Dさんは女性社員たちからイジメの対象となっていきました。

 

◆頭が男子だけど、隠れ美人のDさんはいつしか「エッチ好き」

 ある日、Dさんは後輩の女性から「相談があるんですけど聞いてもらえますか」と言われました。普段はほとんど接触のない後輩からの思わぬ話に驚きましたが、もともと言葉の裏を読んだり、疑ったりしないDさんは、後輩と食事に行くことを了承しました。

 相談内容は、その後輩の女の子が付き合っている彼氏の話でした。話を聞いていくとセックスの悩み。後輩の女の子はどうしても開放的になれないことに悩んでいると言い、Dさんは、自分を信頼してくれて、他の人には言えないようなプライベートな話を打ち明けてくれたのだと思い、親身になって自分の経験も含めてDさんなりにアドバイスをしました。
 “頭が男子”である女性は、いわゆる“姉御肌”の気質を持ち合わせているので、話の方向性が見えないガールズトークは苦手でも、解決を求められる相談ごとについては、むしろ得意。一生懸命にどうしたらいいのかと解決策を探してあげようとしたというわけです。いかにも男性的な発想です。
 後日、また別の女性社員から似たような相談ごとがありました。この段階で「何かおかしいな」と思わないのは、“頭が男子”のADHDの特性のひとつで、「裏を読まない・裏を読めない」というものがあるからです。
  その後まもなく、Dさんは「男癖が悪い」、「男好き」などという陰口を言われるようになりました。Dさんが後輩の悩み相談の際に話した自分の男性経験は、いつの間にか女性社員のみんなに知れ渡っていました。 
 それどころか話した内容が「男性の魅力を話す」→「男好き」、「セックスは相手を思いやることだから大事にしている」→「セックス好き」と話をおもしろおかしい方向へと歪曲させ、さらに尾ひれまでつけて社内の男性との「二股」、「三股」などいわれのない下品なウワサまで出てしまったのです。
 そのあらぬウワサによってもともと仲が悪くなかった女性社員からも距離をおかれるようになり、Dさんは完全に孤立。仕事にも支障が出てきました。 
 Dさんは、自分は何も悪いことをしていないのになぜ「イジメ」に遭わなければならないのかと理不尽な思いにしか至りません。
  そして一晩中眠れずに出勤したある朝、怒りをぶつけるような形で「退職願」を提出。最悪の形で会社から離れることになりました。
  以後、Dさんは部屋でとつぜん過呼吸になったり、めまいが襲ってきたりという症状が頻繁に起こるようになっていきました。思うように家事もできず、生活が荒れていきました。
 ある程度片付いていた部屋も散らかり放題にモノが散乱(汚部屋化)
「このままではいけない」と思いつつも、どこから手をつけたらよいのかわからず、気力も湧かない。さらに気力が湧かない自分を責める。そして思うのはいつも「なんで私がこんな目にあうのか」というもどかしい思い。腹が立つものの、怒りと自信喪失を繰り返すうちにふさぎ込む方向へと進みました。
 やっとの思いで人と接することの少ない事務のアルバイトをはじめてみましたが、どうしてもやりがいを見出せず、また落ち込んでいくだけ。落ちていく自分を認めたくなくて、昔の友人から連絡があっても会わない。今の自分を見られるのがつらい。そのうち友人に返信することさえできなくなっていき、友人からの連絡もやがて途絶えてしまいました。
 Dさんは自分の状況が、自分が望んでいるものと大きくかけ離れていることに苦しみ続けました。

◆[ひきこもりからの脱却:吉濱セッション]

 Dさんのケースは、雑談に必要なネタを長期記憶から検索するワーキングメモリや感情共鳴を担うメタ認知を司る前頭葉の脳機能に問題があることが直接的な要因と考えられます。
 社会生活の中では女性も男性も常に一緒の空間にいますから、うまくやっていくにはバランスを取らなければなりません。
 女性とのコミュニケーションが苦手ならば、敢えて自分の方から女性へと話しかけることです。
 Dさんの場合、「とりとめのないガールズトークはまったくできない」と自覚し、その代わりにたとえば流行りのスイーツを買ってきて、一緒に食べながら、話題はスイーツに絞ってトークをするといった〝ピンポイント〟の話題を用いると会話を成り立たせやすくなります。自分を安売りしない程度の気遣い(敢えて悪い言い方をすれば「恩を売っておく」)を心がけます。
 多動・衝動性優位型の性質を持つ人の中には、本人が主導権を握るとDさんのように姉御肌というよい持ち味が出る場合が多く見られます。
 また、Dさんはもともと頭脳明晰。責任感も強く困難なことでも最後までやり遂げる才能を持っています。
 多動・衝動性優位型のADHDに気づいたDさんは、日常生活での女性との付き合い方を工夫しつつも、やはり男性ばかりの職場に身を置くことが自分に合った環境であると思い、建築の請負会社で働きはじめました。
 最初は派遣社員だったのですが、2年が経つ頃、正社員登用のオファーを受けました。今では本領を発揮。建築現場から戻ってきた社員たちから“頼れる姉御的存在”としてのポジションを獲得しました。
 Dさんは自分自身「水を得た魚ってこういう感じ?」と笑っていました。ひきこもっていた時には見られなかった笑顔です。
 ちなみに、Dさんは男性を相手にする接客業にも向いていると悟り、昼間の仕事に支障のない範囲で「副業」として(副業が認められているようです)、試しにナイトクラブでアルバイトをはじめてみようと考えています。

『今ひきこもりの君へおくる踏み出す勇気』より

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『今ひきこもりの君へおくる 踏み出す勇気』
吉濱 ツトム

 

年齢は関係ありません。
「ひきこもり」の改善はいつからでも間に合います。今日からすぐにできるのです。

2018年内閣府の調査で40歳から64歳までの「ひきこもり」が、61万3000人。もしも彼らを支える親たちが「無職」になったら・・・今、世間で不安視されているのが、「7040(ななまるよんまる)」問題。定年退職した70代の親が40代無職の我が子の世話をし、共倒れするリスクのことである。今や、その流れは「8050(はちまるごーまる)」問題にまでスライドされた。

では、どうすればいいのか?

著者の吉濱ツトム氏は、元ひきこもりで、自らのアスペルガーを克服し立ち直った発達障害カウンセラー。2000人を超える個人セッションを行った氏は、こう語る。

そもそも、なぜ「ひきこもり」となってしまったのでしょうか。
自分がダメ人間だから? 甘えているから?
はたまた親のしつけが悪かったから?
いいえ、違います。その考えはいったん捨ててください。
ひきこもりの多くは「発達障害」と関係しています。
ひきこもり者を治療するという発想を捨て、今の「生きづらさ」を回避し、自らの「長所」でカバーする。
本書は、ひきこもりで苦しむ本人とご家族のみなさんといっしょに社会への小さな第一歩を確実に踏み出せる方法を考えわかりやすく解説します。

さあ、今すぐにはじめていきましょう。

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