田代まさしの事件で思い出す、三田佳子次男のこと。クスリにハマる有名人に「やすらぎの郷」はあるか
クスリに限らず、自分のなかの依存的なものをなだめながら生きていくのは容易ではない
では、高橋や田代のような人が回復するのは難しいのだろうか。精神科医の斎藤環は、田代がクスリで捕まる間隔が徐々に長くなってきていることから「治療は成果を挙げている。次はやめられるかもね」とツイートした。じつは、高橋の捕まる間隔についても同じことがいえる。そういう意味で、治療や服役には一定の効果がありそうだ。要はいかに、クスリをやれる環境から隔離するか、だろう。
そのあたりを最近、フィクションのかたちで浮き彫りにしたのが、ドラマ「やすらぎの刻~道」である。世間から隔絶された場所で、かつて活躍した芸能人が集う老人ホーム・やすらぎの郷が、クスリで失敗した元・人気歌舞伎役者の若者を引き取り、更生させるエピソードが紹介されたのだ。
このホームで働くスタッフも前科者ばかりで、彼らは若者にクスリと過去の栄光を忘れさせるべく、恋人を含めた世間との連絡を遮断させたうえで徹底的にしごく。ホームの住人で元・女優の祖母が小遣いを内緒で与えようとしても許さず、若者も素直にその方針に従っていくのである。
折りしも、高橋が脅迫容疑で逮捕された時期と重なっていて、現実との違いにしみじみとさせられた。そういえば、このシリーズの前作「やすらぎの郷」に弁護士役で出演していた橋爪遼も一昨年、覚醒剤で逮捕されている。ちょうどドラマが放送中だったため、収録済みのシーンがカットされるなどした。
橋爪にせよ、高橋や田代にせよ、このホームみたいな場や体制があれば、クスリを断ちやすくなるだろうが、これはあくまでドラマの話だ。一度クスリにハマった人がそこから抜け出すには、現実はもっと苛酷というほかない。
そんななか、三田は「卒母」を宣言。次男が来月、40歳になることを思えば、それもわかるし、批判の声も少ない。女優としては映画「人間失格」で見せた、女とクスリで身を持ち崩した主人公を最後に癒し甘えさせる老女の役が絶品だった。見事に、スキャンダルを肥やしにしているのだ。
橋爪の父・橋爪功も現在「やすらぎの刻~道」の主役のひとりを元気いっぱいに演じている。それぞれ、自分のやれることを頑張るしかないのである。
そして今回、田代に対しては思いのほか、世間は優しい気がする。たとえば、傍聴人ライターの高橋ユキは「立ち直りの代表者」として扱われる「プレッシャー」を指摘。それでなくとも、一度知った魅惑を毎日我慢し続けるのは大変な苦行のはずだ。
クスリに限らず、自分のなかの依存的なものをなだめながら生きていくのは容易ではない。人は良くも悪くも、快楽を死ぬまで追い求める生き物なのだから。
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『痩せ姫 生きづらさの果てに』
エフ=宝泉薫 (著)
女性が「細さ」にこだわる本当の理由とは?
人類の進化のスピードより、ずっと速く進んでしまう時代に命がけで追いすがる「未来のイヴ」たちの記憶
————中野信子(脳科学者・医学博士)推薦
瘦せることがすべて、そんな生き方もあっていい。居場所なき少数派のためのサンクチュアリがここにある。
健康至上主義的現代の奇書にして、食と性が大混乱をきたした新たな時代のバイブル。
摂食障害。この病気はときに「緩慢なる自殺」だともいわれます。それはたしかに、ひとつの傾向を言い当てているでしょう。食事を制限したり、排出したりして、どんどん瘦せていく、あるいは、瘦せすぎで居続けようとする場合はもとより、たとえ瘦せていなくても、嘔吐や下剤への依存がひどい場合などは、自ら死に近づこうとしているように見えてもおかしくはありません。しかし、こんな見方もできます。
瘦せ姫は「死なない」ために、病んでいるのではないかと。今すぐにでも死んでしまいたいほど、つらい状況のなかで、なんとか生き延びるために「瘦せること」を選んでいる、というところもあると思うのです。
(「まえがき」より)