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歴史的海上交易国家オランダが誇る海兵隊

第二次大戦海兵隊列伝⑥ ~碧海から緑陸へと殴り込む精鋭部隊~

■歴史的海上交易国家オランダが誇る海兵隊

機械化旅団プリンセス・イレーヌ所属の兵士たち。彼らの中には海兵隊出身者も含まれていた。乗車したロイド・キャリアーの車体前面向かって右にはオランダの国章「黄金のライオン」の旅団マークが描かれている。

 長崎の出島の例に見るように、オランダは大航海時代に隆盛を誇った海洋交易国家である。それゆえ海兵隊の創設も世界で5番目に古く、第2次英蘭戦争の最中の1665年12月10日であった。オランダ海軍の伝説的な司令官であるミヒール・デ・ロイテルの働きかけで実現したもので、当初は海軍連隊と呼ばれた。

 当時は海洋交易国家であり、海洋覇権国家でもあったオランダは、ヨーロッパの他の海洋国家とも制海権を奪い合ったが、強敵だったのがイギリスの海兵隊である。しかし18世紀になるとオランダ海兵隊はイギリス海兵隊と協同で戦う機会も増え、以降は強敵というよりも、よきライバルといった関係に変化した。そして、さらに20世紀に入るとオランダ、イギリス、フランスが同盟関係を築いたため、かつてのようにそれぞれの海兵隊が敵対することはなくなった。

 オランダ海兵隊は、規模こそ小さかったが精鋭の誉れ高く、隊員は勇敢かつ優秀だった。第2次大戦が勃発すると、西方戦を開始したドイツ軍の進撃に足止めをかけるべく、防戦を激しく戦った。また、オランダ領東インド(インドネシア)に駐留していた小規模なオランダ海兵隊は日本軍と戦い、同地が日本軍に占領されると、一部の海兵隊員はオーストラリアへと後退。同地でオーストラリア軍の特殊部隊に加わった者もいる。

 またヨーロッパ方面では、オランダ王室がイギリスへと脱出してロンドンに自由オランダ亡命政府を創設すると、敗戦しドイツに降伏する祖国から脱出した海兵隊の一部は、自由オランダ軍に参加して戦った。彼らは主に同軍の機械化旅団プリンセス・イレーヌに所属し、ベルギーやオランダといった低地帯諸国での戦闘に従事している。

 さらにオランダ海兵隊員の一部の者は、イギリス陸軍の特殊部隊コマンドの中の連合各国の将兵で編成された第10国際コマンド隊隷下オランダ小隊の一員として、自国内での特殊作戦などに従事している。

 一方、太平洋方面のオランダ海兵隊は、日本に占領された東インド奪回に向けてアメリカ本土で同国海兵隊による訓練を受けたが、出撃する前に終戦となった。

 かような歴史的背景を持つオランダ海兵隊は、小規模ながら今日では同国軍中の最精鋭部隊の誉れも高く、特殊部隊化が進んでいる。

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白石 光

しらいし ひかる

戦史研究家。1969年、東京都生まれ。戦車、航空機、艦船などの兵器をはじめ、戦術、作戦に関する造詣も深い。主な著書に『図解マスター・戦車』(学研パブリック)、『真珠湾奇襲1941.12.8』(大日本絵画)など。


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