「介護に罪悪感は不要!」と家族愛の欺瞞を打ち砕いたのは、父の糞尿処理を何度も経験した姉だった!
在宅介護は憎悪を生むだけ
●自宅介護は憎悪を生むだけ
もうすべてが後日談ではあるのだが、姉が教えてくれたのは、
「自宅介護は憎悪を生むだけ」
ということだ。今回の父のホーム入居も「必然」と捉えていた。
世間でよく聞く話は、兄弟姉妹間の親の介護に対する温度差があり、不和と憎悪を生むというやつだ。
一方は「自宅介護するのが子供の責務!」と抱え込み、一方は「ホームに預けたほうが健全!」と喧嘩する。
あるいは、親の介護のなすりつけあい。
「うちは子供が受験で、まだまだ金がかかる。結婚していないんだから介護もやってよ」
「仕事が忙しくてそんな時間はない。働いてない人がやってよ」
などと、独身や子供がいないほうが負担を強いられたりするケース。
住んでいる距離によっても不満は出る。近くに住んでるほうがやらないで、遠くに住んでいるほうがまめに訪れるなど。
さらには、誰が手を出すか、金を出すか、その負担の割合で確執が生まれる話もある。
その点、姉はきっちり俯瞰し、オブザーバーというか司令塔に徹している。金は出さないが、必要な情報は入手して教えてくれる。甘い言葉は一切信用しない。情けも容赦もない。いつも先を見据えた発言をする。だからうまくいった。母は情に弱すぎる。私も現実を知らずにどこか理想主義で甘っちょろいところがある。シビアな姉がいてくれて、本当に良かったと思っている。
そんな姉だが、老人の扱いが実にうまい。ホームに訪れたときに、他の入居者と陽気にしゃべって、妙に場を和ませたりもしている。身内に厳しく、他人に優しい。父の今後、母の現状で気になったことがあれば、姉に報告・連絡・相談するようにしている。
ま、でも基本的に姉も気まぐれなので、電話もメールも「Skype(スカイプ)チャット」も、ガン無視されるときがある。それはそれで彼女の特性なので、仕方ない。(『親の介護をしないとダメですか?』より構成)
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KEYWORDS:
『親の介護をしないとダメですか?』
著者:吉田 潮
親孝行か自己犠牲か、理想と現実の葛藤のドラマ。
老いた両親を持つ子供として介護とどう向き合い、どう取り組むべきなのか。
「優しさ」が「苦しさ」に変わる機微を捉えた本書が無理をせずに、
持続性ある介護のあるべき姿のヒントになると思います。
当代随一の本音コラムニストが、家族との関わり方について
独特の感性で認知症の父、母、姉と自分の家族のドラマを
笑いあり、涙あり、時に愛や憎しみもある実例として描きました。
【目次】
はじめに
第1部親はこうして突然老いていく
第2部母と子はだんだんこうして疲弊する
第3部父の介護で見えてきたもの
おわりに