ゴージャスドレスに見る太ももの正しい使い方
【第9回】美女ジャケはかく語りき 1950年代のアメリカを象徴するヴィーナスたち
やはり赤バックが情熱的なジョージ・シアリングの「Velvet Carpet」はゴールドのドレスが赤い敷物に映えて、素晴らしくゴージャスだ。
Capitolレコードの制作スタッフは一級だから、スタジオ撮影したモデルと別撮りのシャンデリアをうまくコラージュして雰囲気も盛り上げている。
いまどきこんなゴージャスなドレスを着た女性を見ることができるか? ま、高級店オープン時のレセプション・パーティとかにはいそうだけれど……それもだいたいは広告代理店がお金を払ってセレブを招待するので、出席する側もメディアを意識して着飾る、あうんの呼吸、営業スタイルみたいなものだ。
レコード・ジャンキーな人たちは、ゴージャスな世界にはあまり縁も興味もないかもしれない。でも、ゴージャスなドレスが好きな身にとっては50年代って、こういうドレスが当たり前だったの? と思わせるところが美女ジャケの魅力でもあるのだ。
そう、この時代のこの世界に生まれたかった! ああ、こんなゴールドのドレスやネックレスで着飾り、ミュールを履いた美女と真っ赤なヴェルヴェットのカーペットに寝そべられたら……ジャケのなかに入り込みたい!ってね。
あまりそう思ったりする人はいないかな?
よく似た構図のレッド・ニコルズの「in love with Red」は、ほとんど全裸のように見える美女がシフォンの薄絹のなかに横たわって、こちらに笑みを投げかけている。
案外、エロくなくて健全に見えるのは淫靡な妄想をかき立てる要素がないからかもしれない。笑顔も優しそうだしね。微笑み方とか目線で、エロティック度もがらりと変わってしまう、というのは美女ジャケを収集してきてつくづく思うことだ。
とはいえ、こちらもCapitolレコードだから写真の質もデザインも完璧。
そう、ここまでに掲載した3枚がCapitolレコード。他のレーベルはどうしているのだ! と思えば、Libertyレコードのジュリー・ロンドン作品があった。
赤とまではいかないくすんだオレンジ壁をバックに、ゴールドのドレスを着たジュリー・ロンドンがとても美しい。
うしろにマントのように垂れる布が付くドレスは、50年代の映画では夜会服などで出てくるが、これがまたドレス・フェチには堪らないのだ。
肩を露出したドレスは「ローブ・デコルテ」という。脚はロングですっかり隠し、肩や背は大胆に見せる。これはイブニング・ドレスの基本だし、女性のエロティックな衣服としては最高の洗練かもしれない。
筆者のようなドレス・フェチには、こういうのは妄想の湧き出る泉のようなもので、シックでゴージャスな着衣から、いくらでもエロティックなことを夢想することができるから、最高のジャケのひとつなのだ。
ちなみにこちらでジュリーが歌っているのは、タイトルにあるようにブルース。ジャケ写真とまったくイメージが合ってないのだ! このあたりがLibertyレコードか。Capitolレコードだったらもっと内容との連携が綿密だったろうに。
漠然とセクシーな着衣ものみたいな感じでジャケを追ってくると、ああ、今回はゴールドのドレスにハマっていんだな、という自分に気づく。いや、こういう非日常は素敵だし、エロティックだとつくづく思う。