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護衛空母事始め

第二次大戦で勇戦した「小さな巨人」護衛空母①~商船自身が「変身」した空から商船を守る急造軍艦~

■護衛空母事始め

護衛空母の原点となったCAMシップ (Catapult Aircraft Merchant Ship)。カタパルト上には陸上機のホーカー・ハリケーン戦闘機が載せられている。CAMシップを1度発艦した機体は最寄りの陸地に向かうか、それができない場合は味方の艦艇のそばに不時着するなどさせてパイロットだけを救助した。

 空母は軍艦としては比較的新しい艦種で、第1次大戦末期にイギリス海軍が「空母の祖先」のような艦を実戦に投入したのが事始めだった。そしてこの経験に基づき、「七つの海の支配者ルール・ブリタニア」を持ってなる同海軍は、海戦における洋上航空戦力の意義を積極的に捉えようとしていた。
 空母発祥の国イギリスのこのような動きを受けて、アメリカや日本も洋上航空戦力(つまり空母)の整備に注力を始めていた。しかしこれら3国における「空母の敵」は、実は海軍の中にいたのである。
 それまでの海軍では、敵よりも大艦で、重防御に守られ、大口径の巨砲を備えた戦艦を中心とする艦隊が、敵の同様の艦隊と雌雄を決するという「大艦巨砲主義」が主流だった。これに対して、空母と艦上機に依存する「航空主兵主義」は、まだ実戦における評価が下されていないため、イギリス、アメリカ、日本ともに「大艦巨砲主義者」と「航空主兵主義者」に海軍内部が二分されることになったのである。
 しかし1939年9月1日に第2次大戦が勃発すると、イギリス海軍の空母が大活躍し、続く太平洋戦争では、日本の空母艦上機がパールハーバー攻撃に成功するなど、空母の威力はゆるぎないものとなった。
 このような状況の中、無資源国ながら海外領土大国のイギリスは、本土に資源を運ぶ「国家の生命線」ともいうべきシー・レーンを、Uボートの執拗な攻撃で遮断され、輸送船団も多数が撃沈されてしまうという惨事となっていた。
 潜水艦であるUボートを叩くのは水上の戦闘艦艇、例えば駆逐艦やコルヴェット、トローラーなどよりも、航空機が圧倒的に有利だ。それに陸上基地を発進したドイツ空軍の爆撃機や雷撃機が輸送船団を襲って来ることもあるが、これらを迎え撃つには艦上戦闘機が最適である。
 かような理由により、イギリス海軍は大型輸送船やタンカーにカタパルトを取り付けて、「ハチの一刺」ではないが1度出撃したら母艦には戻れない片道出撃の航空機を積んだCAMシップを急造したが、その程度のものではどうしようもなかった。そこで、商船に空母と同じ飛行甲板を取り付けて空母化することが考えられた。
 目的は、輸送船団の護衛(Escort)である。そのためエスコート・キャリアー(Escort carrier)、つまり護衛空母と呼ばれることになった。

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白石 光

しらいし ひかる

戦史研究家。1969年、東京都生まれ。戦車、航空機、艦船などの兵器をはじめ、戦術、作戦に関する造詣も深い。主な著書に『図解マスター・戦車』(学研パブリック)、『真珠湾奇襲1941.12.8』(大日本絵画)など。


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