サリオスではなくコントレイルが最優秀2歳牡馬に選ばれたもう一つの理由
馬の能力、騎手の実力、調教師の戦略……競馬で勝つために欠かせない“力”とは⁉
■厩舎の政治力を考察する
「名騎手、名調教師に非ず」というのは競馬界の常識になりつつあるが、関東の的場厩舎もその例になりつつあると指摘せざるを得ない。最後にふた桁勝利を挙げたのは2010年17勝まで遡る。18年1勝、19年1勝と2年連続して苦汁を飲んだ。0勝という不名誉記録は回避したものの、騎手時代の華やかさを考えると寂しいと指摘せざるを得ない。
「セレクトセールにも毎年といっていいほど来場しているけど、馬を買って入れてくれる馬主さんが少ないというのが現状だよね。かつては社台系クラブの馬もチラホラといたけど、成績が低迷するにつれて切られてしまった。サトノの里見オーナーや林正道オーナーなどの馬もたまに回ってくるけど、成績は残せていない。今後も浮上する要素は少ないよね」と競馬マスコミ関係者は語る。
素人考えでは騎手時代の人脈があれば、ここまで苦労しないとも思うのだが……。
「付き合いのあった個人馬主たちは代替わりもあるし、大手牧場からの信頼がなくなってしまうと預託馬の質はどうしても落ちる。それに、スター騎手だった人ほど根本的に営業が苦手だよね」という状況だとか。成績が悪くなればなるほど馬主に対する営業が鈍りがちになるという。
「結局、厩舎を運営する上では営業力や、政治力みたいなものは重要。どんなに成績を残していなくても、営業されれば個人馬主さんたちも悪い気分はしないじゃない。しかも、それなりに頭数を所有している馬主さんなら1、2頭は馬を回してくれるはず。
JRAの年度代表馬の選考を見ていても厩舎の政治力は重要だ、というのが判明したでしょ」とは別の競馬マスコミ関係者。
最優秀2歳牡馬に選ばれたのはホープフルSを勝利したコントレイル。ホープフルSはGIに昇格してはいるが、格という意味では朝日杯FSが上とされてきた。朝日杯FSを勝利したサリオスが従来であれば有利だったが、厩舎の政治力の差ではないかという声が上がっている。
「そもそもあそこまで票差がつかないよね(コントレイル197票、サリオス77票)。これはコントレイルが矢作厩舎、サリオスが堀厩舎だったことも大きいと思うよ。マスコミに対して協力的な矢作厩舎。マスコミとは残念ながら折り合いの悪い堀厩舎。レース内容はともかく「新馬」→「GⅢ」→「GⅠ」と3連勝したのは同じ。本来ならもっと競っても良かったよね」
18年は朝日杯FSを勝利したアドマイヤマーズが153票、ホープフルSを勝利したサートゥルナーリアが123票だった。
「馬主でも、クラブ馬主より個人馬主に記者連中が気を遣うという傾向があるにしても、この差は厩舎の差だよ」と裏読みするほど。
さまざまなところに厩舎の営業力や政治力の差が出てしまうのだ。