武豊とアドマイヤビルゴ、勝利の裏に隠された複雑な大人の事情
6億円超の高額馬、約10年ぶりに復活した武豊騎手とアドマイヤのコンビ復活などレース以外の面でも注目を集めたアドマイヤビルゴの行く末はいかに?
■アドマイヤビルゴの勝利にホッとひと息!?
先週の1月19日京都6Rの新馬戦を勝利したのはアドマイヤビルゴ
(牡3、栗東・友道厩舎 父ディープインパクト、母イルーシヴウェーヴ)。消費税を含めれば6億2640万円という驚異の価格で取引された馬だ。昨年11月に亡くなった近藤利一氏も、同馬をセレクトセールで落札した際は「種牡馬にしないといけないし、ディープインパクトの後継にならなくちゃいけない」と語っていたほど。
その期待度の高さとは裏腹にデビューまでは紆余曲折があったという。とある馬産地で活動をしているライターは次のように語る。
「そもそも馬体が牡馬にしては小さすぎてデビューできるのかという話もあったほど。POG(ペーパーオーナーゲーム)の際にも話題にはなっていたけど、どこの社も期待度の高さだけを触れていたほどだった。
1週前時点の追い切りに跨った武豊騎手も歯切れがよくなかったし、とりあえずデビューに漕ぎつけただけ、かと思っていたけど……」
見事にフアナ(牝3、栗東・角居厩舎 父ルーラーシップ、母イサベル)らを抑えての勝利に実況アナも思わず近藤オーナーのことに触れていた。この勝利には同馬を生産したノーザンF関係者、友道厩舎、騎乗した武豊騎手もホッとしたことだろう。口取りでは旬子夫人と関係者らが遺影を持って撮影に。武豊騎手もにっこりと微笑みかけるという表彰式だった。某馬主関係者は意地悪く解説する。
「近藤オーナーが遺言で『武豊騎手』をと要望したのも確かだろう。ただ、同馬を引き継いだ遺族たちが、前オーナーのように馬主業を維持していくかは分からないよね。競馬の場合、馬主欄に掲載されているのはあくまでも馬主の代表者みたいなもの。勝てば価値も高まるし、注目されるのも悪い話じゃないから。新馬戦を勝つことは馬主にとって重要なんだよ」
いわゆるそこには大人の事情が絡んでいることを示唆してくれた。近藤氏は生前、セレクトセールで落札した馬をキャンセルしたことがしばしばあった(トーセンバジルなどが該当)。アドマイヤビルゴも恐らく共有という声が上がっている。また、興味深かったのは2着馬フアナのオーナー。同馬は近藤利一氏の元夫人である英子氏の所有馬である。前出の某馬主関係者は面白おかしく続ける。
「いやー、数年前のアザレア賞(17年)を思い出したよ。この時は発表こそされていなかったけどすでに離婚していた。1番人気が英子氏のアドミラブル、2番人気がアドマイヤロブソンという人気だった。ともにノーザンFの生産馬だし、普通は使い分けるところでしょう?
ところがアドミラブルはM・デムーロ騎手、アドマイヤロブソンはルメール騎手でガチンコの勝負。結果はアドミラブルが勝利して、その後に青葉賞も勝利。仮に負けていたら青葉賞にもダービーにも出られなかったわけだから。
今回は一矢報いたというと語弊もあるのは確かだけど(苦笑)、結果も含めて面白い一戦となったのは間違いないよね」
否が応でもアドマイヤビルゴは今後も注目される存在となることだろう。近藤利一氏が願ったように競馬界を代表するようなスターになれるのか。興味は尽きないところである。