「妻のそばにいることしかできない!」難病「魚鱗癬」の息子誕生で誓い合った夫婦の絆と母の愛情
難病を持つ我が子を愛する苦悩と歓び(8)
◆「辛かったらいつでも言いな」と母の声
ある日の夜、ひとりでいる時、いつの間にか私は実家に電話していた。電話に出たのは母。会話は、息子の様態について。もう何度か電話で説明していたので、話すことはほとんど無いが……。
「大丈夫か? 辛かったらいつでも言いな」
母の言葉に、私は力強く答えた。
「いや、僕はもう大丈夫。何があっても絶対沈まん。心配いらんよ」
「そうか、あんたは強いね」
母は泣いていた。
「あんたたちが心配で……、ごめんな、私たちは何の支えにもなれなくて」
震えた声が聞こえる。何の支えにも……。そんなことない。
「十分、支えになるよ。だって何も無いのに電話をかけて、それだけで、救われる。ただ、話をするだけで……」
言っているうちに、涙が止まらなくなってきた。なぜ最初、電話をしていたのか自分でも分からなかった。頼りたい。 甘えたい。そういう思いがあったのか。
もう父親なのに。冷静になったはずなのに。心が折れそうだった。
昔のまま、私は泣き虫だった。
だが、私は母に救われた。
話をするだけで、そばにいるだけで、人の心は救われる。
私は妻のそばにいることしできない。
それだけてで充分なのかもしれない。父親が泣いてちゃ駄目だ。両親が潰れたら、どうしようもない。
自分だけは前を向く。妻も、いずれは前を向いてほしい。
でも今は、焦らずゆっくりでいい。妻が前を向けるまで自分は後ろを振り返らない。そう、強く決心した。そこから、私は悲しみで泣くことは無くなった。
(『産まれてすぐピエロと呼ばれた息子』より)
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産まれてすぐピエロと呼ばれた息子
ピエロの母
本書で届けるのは「道化師様魚鱗癬(どうけしようぎょりんせん)」という、
50~100万人に1人の難病に立ち向かう、
親と子のありえないような本当の話です。
「少しでも多くの方に、この難病を知っていただきたい」
このような気持ちから母親は、
息子の陽(よう)君が生後6カ月の頃から慣れないブログを始め、
彼が2歳になった今、ブログの内容を一冊にまとめました。
陽君を実際に担当した主治医の証言や、
皮膚科の専門医による「魚鱗癬」についての解説も収録されています。
また出版にあたって、推薦文を乙武洋匡氏など、
障害を持つ方の著名人に執筆してもらいました。
障害の子供を持つ多くのご両親を励ます愛情の詰まった1冊です。
涙を誘う文体が感動を誘います。
ぜひ読んでください。