虐待を生き延びるだけでは十分ではない。
「虐待サバイバー文学」が教えること
生きることは生易しいことではない
■もし「虐待サバイバー文学大賞」があるとしたら
「虐待サバイバー文学大賞」なるものがあるとしたら、受賞者に選ばれるのは、まず小林エリコだろう。小林は、子ども時代からの虐待体験や成人後のブラック職場での生活や精神病院生活や生活保護受給体験を漫画やエッセイの形式で発表している。
小林は、自分の体験記を最初はフリーペーパーにして店先に置かせてもらった。それが評判となり、文学フリマでまとまった文章を売るようになった。それが出版社の目に留まった。
小林の『この地獄を生きるのだ うつ病、生活保護。死ねなかった私が「再生」するまで』(イーストプレス、2017)や、その姉妹編の『わたしはなにも悪くない』(晶文社、2019)と『生きながら十代に葬られ』(イーストプレス、2019)は、タイトルの秀抜さ卓抜さだけでも、読者の心をつかむのに十分なインパクトがある。
酒乱の父による虐待に、子どもの希望する進路を頑強に否定する両親。短大卒業後の就職氷河期にやっとありついた仕事はエロ漫画出版社の編集だった。給与は手取り12万円。生活苦に疲れ服薬自殺を図ったが死にきれず、病院退院後は精神病院に直行。生活保護を受けることになったが、ケースワーカーは生活保護受給者を蔑むだけ。何度も自殺未遂を繰り返す日々。
子ども時代に虐待を受けると、成人後もそのトラウマに悩まされる。被害妄想や孤立感に苦しむ。信頼できる人間関係を求めるあまり、人間関係を維持するのに適切な距離感を持てない。ただでさえ孤独なのに、一層に孤独になる。
やっと虐待から抜け出した先に待っていたのは、幸福ではなく、矛先のない怒りと虚しさである。「どうして私が、このような人生を送らねばならないのか」と自分に問い続けても、答えは出ない。その苦しさを口に出せば、いつまで甘えているのか、過ぎたことにこだわりすぎるとか批判される。
KEYWORDS:
『馬鹿ブス貧乏で生きるしかないあなたに愛をこめて書いたので読んでください。』
著者/藤森かよこ
死ぬ瞬間に、あなたが自分の人生を
肯定できるかどうかが問題だ!
学校では絶対に教えてくれなかった!
元祖リバータリアンである
アイン・ランド研究の第一人者が放つ
本音の「女のサバイバル術」
ジェーン・スーさんが警告コメント!!
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これは警告文です。本作はハイコンテクストで、読み手には相当のリテラシーが求められます。自信のない方は、ここで回れ右を。「馬鹿」は197回、「ブス」は154回、「貧乏」は129回出てきます。打たれ弱い人も回れ右。書かれているのは絶対の真実ではなく、著者の信条です。区別がつかない人も回れ右。世界がどう見えたら頑張れるかを、藤森さんがとことん考えた末の、愛にあふれたサバイバル術。自己憐憫に唾棄したい人向け。
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あなたは「彼ら」に関係なく幸福でいることだ。権力も地位もカネも何もないのに、幸福でいるってことだ。平気で堂々と、幸福でいるってことだ。世界を、人々を、社会を、「彼ら」を無駄に無意味に恐れず、憎まず、そんなのどーでもいいと思うような晴れ晴れとした人生を生きることだ。「彼ら」が繰り出す現象を眺めつつ、その現象の奥にある真実について考えつつ、その現象に浸食されない自分を創り生き切ることだ。
中年になったあなたは、それぐらいの責任感を社会に持とう。もう、大人なんだから。 社会があれしてくれない、これしてくれない、他人が自分の都合よく動かないとギャア ギャア騒ぐのは、いくら馬鹿なあなたでも三七歳までだ。(本文中より抜粋)