「なぜ私の子供がピエロ?」難病「道化師様魚鱗癬」の子を産んだ日、若き母の苦しさと悲しみの記憶
難病を持つ我が子を愛する苦悩と歓び(9)
◆おめでとうと言われた日
手術台の上。不安と、もうすぐ息子に会える喜びで、心拍があがる。
そんな中、お腹を切る先生の声が響く。
「えっ」
「あれっちょっと」
何?
「えっ」て何 ?
「あれっ」て何が ?
ちょっとって、一体何なの?
そう思った瞬間、お腹がスッと軽くなったと同時に、
「にゃ〜」
「ふにゃ〜」
まるで仔猫のような、か細い、愛しい息子の声が聞こえた。
よかった、生きてる。
でもその二回の泣き声で終わり、手術室は焦った声が飛び交う。
お腹から処置台に移動する、小さい小さい息子は、先生方に囲まれてハッキリと見ることができない。
それでも隙間から見ようとする。
見えた! え ? 見えた ?
あれは・・・なんだ ? 私は、何を産んだの?
・・・人じゃない。
訳がわからない。
どうなってるの。
誰か教えて。
誰か助けて。
私の息子は、大丈夫なの?
呼吸確保の処置が終わり、すぐに無菌カプセルに入れられ、私の近くにきた。
「おめでとうございます」と先生は言った。私は
「ありがとうございます」と言うしかなかった。
そして
「この子は大丈夫なんでしょうか」と尋ねると、
「なんともいえません」の一言。
今からすぐ集中治療室(NICU)へ移動するとのこと。
あっ、手術室の前には、夫と私の母が楽しみにして待っている。
大丈夫かな、倒れないかな。
そう考えているうちに、パチッパチンッと開いたお腹を、ホッチキスで塞ぐ音が聞こえ、帝王切開は無事に終了。
手術室から出ると、案の定、真っ青な顔の夫。
私を心配そうに見つめる母。
そして、なぜか強がり笑顔の私。
部屋に戻り、睡魔、身体の震え、発熱、痛みに耐えながら私は眠りについた。
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KEYWORDS:
産まれてすぐピエロと呼ばれた息子
ピエロの母
本書で届けるのは「道化師様魚鱗癬(どうけしようぎょりんせん)」という、
50~100万人に1人の難病に立ち向かう、
親と子のありえないような本当の話です。
「少しでも多くの方に、この難病を知っていただきたい」
このような気持ちから母親は、
息子の陽(よう)君が生後6カ月の頃から慣れないブログを始め、
彼が2歳になった今、ブログの内容を一冊にまとめました。
陽君を実際に担当した主治医の証言や、
皮膚科の専門医による「魚鱗癬」についての解説も収録されています。
また出版にあたって、推薦文を乙武洋匡氏など、
障害を持つ方の著名人に執筆してもらいました。
障害の子供を持つ多くのご両親を励ます愛情の詰まった1冊です。
涙を誘う文体が感動を誘います。
ぜひ読んでください。