悲劇でなく奇跡! 難病「魚鱗癬」を患う我が子と若き母が向き合ったとき自然に「会いたい!」と母の愛情が溢れてきた
難病を持つ我が子を愛する苦悩と歓び(13)
◆自分を納得させるためにかき集めた奇跡
退院の日をむかえる前夜、私は「陽(注:よう=我が子)は生きるために産まれてきた」という証拠をかき集めた。自分の中で陽の誕生を奇跡と思うことにより、自分への慰めをかき集めることにしたのだ。
他人からしたら、そんなの奇跡でもなんでもない。
そう思われても構わない。
「奇跡の子」なのだと自分を奮い立たせたかったのだ。
●もし、予定日より約1ヶ月早い出産でなければ、症状はもっと酷かった。
●もし、逆子ではなくて、帝王切開でなく普通分娩で出産していたら、感染症を起こしていた。
●もし、あと4日遅く破水していたら、予定通り地元の産婦人科で帝王切開をし、適切な処置をすぐに受けられず、搬送中(はんそうちゅう)に感染症を起こしていた。
●大きな病院の中でもこの珍しい病気を知らない先生が多いなか、この病院には昔よく似た病気の患者さんをみたことがある先生がたったひとりだけいた。
どれかひとつなくても、今の陽はいないんだ。
妊婦検診ではなぜ分からなかったのか。
この病気は全ては皮膚のせい。最初に作られる骨はちゃんとある。内臓もちゃんとある。皮膚のせいで変形していくだけ。妊婦検診のエコーの段階では分からない。骨も内臓もちゃんと写るから、でも顔の表情が1度でも見れたら、異変に気づけたのかもしれない。
何度も何度も、顔が見たくて挑戦しても、手や足で頑なに隠していた。
見られたくなかったのかな。僕は頑張ってるから、今は見ないで。そう伝えたかったのかな。
物事の捉え方なんて、人それぞれ。だから私は、全てのことを奇跡とすることにした。
まだまだ自分の中での気持ちの浮き沈みは激しい。朝起きたらまた違う感情、考え方をしているかもしれない。
可哀想な私、と悲劇のヒロインぶっているかもしれない。自分でも、1分先の自分が分からない。
だからこそ、もっともっと「奇跡」をかき集めたかった。
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KEYWORDS:
産まれてすぐピエロと呼ばれた息子
ピエロの母
本書で届けるのは「道化師様魚鱗癬(どうけしようぎょりんせん)」という、
50~100万人に1人の難病に立ち向かう、
親と子のありえないような本当の話です。
「少しでも多くの方に、この難病を知っていただきたい」
このような気持ちから母親は、
息子の陽(よう)君が生後6カ月の頃から慣れないブログを始め、
彼が2歳になった今、ブログの内容を一冊にまとめました。
陽君を実際に担当した主治医の証言や、
皮膚科の専門医による「魚鱗癬」についての解説も収録されています。
また出版にあたって、推薦文を乙武洋匡氏など、
障害を持つ方の著名人に執筆してもらいました。
障害の子供を持つ多くのご両親を励ます愛情の詰まった1冊です。
涙を誘う文体が感動を誘います。
ぜひ読んでください。