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Scene.4 気分はいつもライブ。

高円寺文庫センター物語④

大手情報週刊誌『ぴあ』の営業さんには、「映画からレストランとデートコースの情報を盛り込んでいるんだから、最後まで面倒みなさいよ」「単行本では難しいですけど、コーナーができるくらいには報告してみます」

女子向けの雑誌を出している出版社が「店長、新規格の新書版シリーズになにかアイデアないですか」と尋ねてきた。

これにも、すかさず「ラブホテルのガイドは? 雑誌を見ていると、最近はシティホテルやブティックホテルと女子に受け入れやすい呼び方になっているから当たるかもよ」

親会社が建築・不動産業の、その出版社は早かった。しばらくして来店した時には、新刊案内のラインナップにミニ・シリーズ「ブティックホテル・ガイド 都内版」さらに「郊外版」の2点が企画されていた。

他の業界から、参入してきた出版社の素早いスタンスは見事と感心した。雑誌棚の前面のガラスにフックをかけて収納するラックまで用意してきたので、女性誌コーナーの前面に置いて目立ったから売れたなぁ。

実際のミニ・シリーズ

後日、その営業さんいわく「女性がホテルを選ぶ時代になったようで、ホテルもガイドも明るいスタイルが好まれるそうです。お蔭さまで、シリーズは好調なんですよ」

出版社の営業さんは、本屋の声をくみ取れるかどうかだなと彼の行動力に感心した。

「ちーす! 暑いっすねぇ!」

「わお! 石川ちゃん、今年は猛暑だもんねぇ。熱い中をお疲れさん!」

「店長、日焼けで真っ黒じゃないっすか! 毎日、海だったり(笑)」

「近くのプールガーデンだってば、もう6回は行ってる。まだまだ行くよ! こないだ文庫センターのみんなで豊島園遠足したけどさ、そん時も暑いのなんの。」

「ホント、近年にない暑さっすよねぇ! ところで、これ買っちゃった。」

「わ! 内山くん、石川ちゃん『真夏の果実』サザンの新譜、もう買っとるばい!」

「よかねぇ店長、あとで新星堂に行って買わんと?! 店でガンガンにかけるとよ」

「あとほらたまの『さよなら人類』を、店長が聴け聴けってうるさいから(笑)」

「だってさ、やっぱ大ブレイクしたでしょ! 2月に吉祥寺曼荼羅Ⅱのライブに知久くんに招待されて行ったらめちゃ混みで、一番前のテーブルなのにステージにくっついちゃうほどだったんだもん。

友部正人、あがた森魚、シバと一緒の「さよなら20世紀」ってコンサートに立川までも行ったからね!」

「そすか、めっちゃ入れ込んでるじゃないですか」

「そりゃ、たまは日本のビートルズだと思うよ。あの四人の個性はさ。」

「店長、ストーンズばい。2月の初来日公演はめちゃくちゃよかった!」

「う~ん、悔しい残念! その代りモトリー・クルーの武道館に行ったもんね!」

「まった店長、負けず嫌いやねぇ。やっぱストーンズばい!」

「あのさ店長、営業したいんっすけど!」

 

「店長、『イカ天』出ることになったばい」

「マジで?! あんなのって、バカにしとったろうが」

九州男児のイメージ、いい加減だけど。ま、いいか! どうなるの、内山くんのバンド・・・・

 
 

 

 

 

 

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のがわ かずお

1951年 東京生まれ。書泉を経て、高円寺文庫センター店長。その後、出版社のアートン・ゴマブックス・亜紀書房顧問。本屋B&B、西日本出版社などにかかわる。 温泉とプラモデルと映画を、こよなく愛する妖怪マニア。共著『現代子育て考5.男の子育て』(現代書館)、『独断批評』(第三書館)。


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