産後1カ月、指先から感じる我が子と若き母、父の愛情。皮膚の難病「魚鱗癬」の息子との宝物となる1枚の写真
難病を持つ我が子を愛する苦悩と歓び(16)
■ペラペラな1枚の宝もの
この日、陽の周りには、たくさんの笑顔が溢(あふ)れていた。
そのなかには、もちろん私の笑顔もあった。
「はい、撮りますねー」と言ってシャッターを切る先生、
「陽ちゃん〜こっちだよ〜」と声を掛けてくれる看護士さんたち。
レンズに写るのは、陽と、夫と、私。
初めての家族写真。
小さな穴から、手袋をした手をいれ、そっと陽に触れる夫と私。
泣かずに、ゆっくり腕を動かしている陽。
色んな人に見られながらの撮影は、少し恥ずかしかったけれど、
なんとも言えない、幸せな気持ちで胸がいっぱいだった。
ペラペラな、薄い1枚の写真が、私たちの一生の宝ものとなった。
もっともっと、宝ものを増やしていこう。
そしてこの頃から、陽にある変化がみられた。
陽の赤い目、
その赤い目の下から、時々3ミリくらい、黒目らしきものが見えるようになってきた。
ちゃんと目玉がある。
圧迫されて、どれほど眼球に負担がかかっているかは、わからないけれど、ちゃんとある。
赤い目に見えるのは、かたい皮膚に引っ張られて、裂けて、瞼(まぶた)が裏返っているのが原因だった。
いつか、しっかりと目を開けて、
父ちゃんと、母ちゃんを、見てね。
いろんなものを、一緒に見ていこうね。
そう強く願った。(『産まれてすぐピエロと呼ばれた息子』より)
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KEYWORDS:
産まれてすぐピエロと呼ばれた息子
ピエロの母
本書で届けるのは「道化師様魚鱗癬(どうけしようぎょりんせん)」という、
50~100万人に1人の難病に立ち向かう、
親と子のありえないような本当の話です。
「少しでも多くの方に、この難病を知っていただきたい」
このような気持ちから母親は、
息子の陽(よう)君が生後6カ月の頃から慣れないブログを始め、
彼が2歳になった今、ブログの内容を一冊にまとめました。
陽君を実際に担当した主治医の証言や、
皮膚科の専門医による「魚鱗癬」についての解説も収録されています。
また出版にあたって、推薦文を乙武洋匡氏など、
障害を持つ方の著名人に執筆してもらいました。
障害の子供を持つ多くのご両親を励ます愛情の詰まった1冊です。
涙を誘う文体が感動を誘います。
ぜひ読んでください。