難病「魚鱗癬」を患う息子を産んだ若き母が世間の視線(見られる差別)と戦いながら抱きしめる瞬間!
難病を持つ我が子を愛する苦悩と歓び(17)
◆嬉しくて胸が詰まる「幸せ」の苦しみ
陽の場所が変わり、初めての面会。
陽の居場所を見つけることは容易だった。
そして確かに、みんなに見えてしまう場所。
授乳後に体重を測る台の、すぐ隣なのだから。
しかし機械や処置道具が多いため、その場所でないとスペースが確保できないことも、
すぐに理解できた。
少しでも見えないようにと、パーテーションが置いてあり、先生方の配慮(はいりょ)も伝わった。
陽、ここからがスタートだね。
病院を出たら、もっとたくさんの人がいるよ。いろんな人で溢れているよ。
私たちが、守るよ。
そして、また面会が続き、
そんなある日のこと、無菌カプセルからも出られるようになった。
更に、陽は白い布をまとっていた。
完全滅菌された、白い肌着、布切れ1枚の偉力は凄まじいものだった。
「陽、すごいねー!」
「服着られたんだねー!!」
本当に本当に嬉しい。
鼓動が高鳴る。
服が着られたということは、抱っこができるから、そう言われていたから、嬉しくてたまらない。
先生方の「抱っこしますか?」という問いに、
「・・・はい」と静かに答えた。
いざとなると不安が押し寄せ、全身ベタベタにワセリンを塗り、肌全体にバリアをつくってあるから大丈夫だと言われても、擦れて痛くないのかと心配になった。
着々と抱っこの準備は進み、何枚もエプロンを着て、
私の見えている肌の部分は、目元だけの状態。
「そこに座って待って下さい」そう言われ待つと、
バスタオルで包まれた陽を、看護師さんが優しく抱っこして、近付いてきた。
胸が苦しい。
でもこの苦しさは、今までの辛く悲しい苦しさとは違う。
嬉しくて胸が詰まる、
幸せの苦しみ。
初めての抱っこに、緊張しつつ、私はそっと我が子に手を伸ばした。
やっとやっと、我が子をこの胸に抱くことができる。
陽、おいで。
(『産まれてすぐピエロと呼ばれた息子』より)
- 1
- 2
KEYWORDS:
産まれてすぐピエロと呼ばれた息子
ピエロの母
本書で届けるのは「道化師様魚鱗癬(どうけしようぎょりんせん)」という、
50~100万人に1人の難病に立ち向かう、
親と子のありえないような本当の話です。
「少しでも多くの方に、この難病を知っていただきたい」
このような気持ちから母親は、
息子の陽(よう)君が生後6カ月の頃から慣れないブログを始め、
彼が2歳になった今、ブログの内容を一冊にまとめました。
陽君を実際に担当した主治医の証言や、
皮膚科の専門医による「魚鱗癬」についての解説も収録されています。
また出版にあたって、推薦文を乙武洋匡氏など、
障害を持つ方の著名人に執筆してもらいました。
障害の子供を持つ多くのご両親を励ます愛情の詰まった1冊です。
涙を誘う文体が感動を誘います。
ぜひ読んでください。