「自分の世界を広げてくれる本との出逢い方」と「村上春樹さんを初めて読んだ時の衝撃」【角田陽一郎×加藤昌治】
あんちょこ通信 第5回
ビジネスパーソン専用の初のお悩み解決辞典として注目を浴びている『仕事人生あんちょこ辞典』著者の角田陽一郎、加藤昌治が、みなさまから届いた「仕事人生のお悩み」にパシパシ答えていきます。今回の質問は、ずばり「本」についてです。“自分の世界を広げてくれる本との出逢い方”と“村上春樹さんの本を初めて読んだ時の衝撃” を読書の達人ふたりに語っていただきます。
■相談者の質問
「GWの空いた時間に本を読もうと思っています。これまで読んだことのないジャンルの本が読みたいのですが、どうやって見つければいいのでしょうか?」
角田さん、加藤さんともに読書家ですが、どうやって本と出会っているのでしょうか?
■今は、その本と「出会う」タイミングではないのかもしれない
加藤:「どんな本を読めばいいのか」という質問だけど、「なんでもいいんじゃないの?」がかとうの回答かな。とはいえ、本とは・・・やっぱり当たり外れや、「べつに今読まなくてもよかったな」みたいなことがあるから、その時に途中でやめる勇気を持つことが大事だと思います。
角田:僕も全く同じことを言おうと思ってた!
本が読めない人って、「読まなきゃいけない」と思ってるんだよね。でも、僕の『読書をプロデュース』という本にも書いてあるんだけど、むしろ「読まなくてもいいや」って投げ捨てる勇気が必要なんだ。
その上で最後まで読めた本が「面白い」ということでいいんじゃないかなと思う。「買ったんだからもったいない」みたいに考えないほうがいいと僕も思います。
加藤:それに、本は安いですからね。
角田:高くても2000円しないよね……と言いながら『仕事人生あんちょこ辞典』の価格は2700円+税だけど。でも2冊分以上の分量があるからね。
加藤:本が本として出版されているということは、出す価値があると著者も編集者も版元も思ったわけですけれど、それとは別に「自分との相性」ってやっぱりあるじゃない。その意味でずっと相性の悪い本もあれば、いつかタイミングが訪れる本もあるよね。
角田:それで言うと、僕はガルシア=マルケスの『百年の孤独』に何回もチャレンジして、いつも読めななかったんですよ。20歳ぐらいで初めて手に取って、それから5年ごとぐらいにチャレンジしてたんだけど、いつも結局最後まで読めなかった。
でも40歳ぐらいになってから読んだら、これが面白くて、あっさり読めちゃったんです。こんなふうに、読めなかったところから何度も繰り返して、読めるに至るまでの期間が「読書」だとしたら、それは読書体験として一番面白いんじゃないかな。
加藤:なるほどねぇ。
角田:歳を取ってからようやく読める本なんて死ぬほどある。もうひとつ例を挙げると、ハタチぐらいの時に予備校の古文の先生が「鷗外は『渋江抽斎』が一番面白かった」って言ってたから、「そんなに面白いのか?」と思って読んでみたんだけど、これが当時は全然読めないわけだよね。
というのも、『渋江抽斎』ってただの日記で、「この時に何を食べて、誰と出会って」というのが延々と繰り返されてるだけなんです。それをその予備校の先生は「一番面白い」と言ってて、当時は意味が分からなかった。
ところが、これも数年前に読み返したら最高に面白かったんだ。
加藤:お、そうなんだ。
角田:「森鷗外、天才だな」と思ったけれど、それはやっぱりハタチじゃ分からないんだよ。森鷗外が『渋江抽斎』を書いたのは50代の頃だから、やっぱり50になると分かることがあるんだと思う。
「そういうことがある」という体験まで含めて「読書」なんだと思う。だから、読めない本があったら積ん読にして、本棚に置いておくといいんじゃないかな。
加藤:最近は新刊点数が多い分絶版になる本も多いですが、それでも図書館や古書も含めて、昔の本に出会いやすい環境になっていることも事実ですから、逆に一回手放してしまってもいいと思っています。
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