AKBに乃木坂、ももクロも。アイドルの体重公開は究極のエンタメだ【宝泉薫】
■くみっきーこと舟山久美子は「ポップティーン」のモデル時代、37キロ(身長155センチ)
もっとも、痩せ型の芸能人の体重公開には、一般人の瘦せ願望を煽ると懸念する向きもある。それを否定するつもりはないし、実例も見てきた。特に印象的だったのが、くみっきーこと舟山久美子による影響だ。
「ポップティーン」のモデル時代、37キロ(身長155センチ)までダイエットして、誌面でも大きく取り上げられた。カジュアルなファッション誌の人気者という身近さからか、彼女に憧れて痩せようとした女の子はかなりいたように思う。
ただ、それも自己責任だ。芸能人が体重を公開するのも、一般人が憧れて痩せようとするのも自由というほかない。もともと、善悪の問題ではないのである。
かと思えば、体重公開絡みでその当事者が激痩せしたこともある。2010年、ももいろクローバー(現・ももいろクローバーZ)がメジャーデビューする際、その条件として「(身長-100)×0.8」以下の体重をクリアすることを設定。デビュー2ヶ月前の公開体重測定において、高城れにだけがそれを0.8キロ上回ってしまったのだ。
他のメンバーからは、
「大丈夫、絶対クリアしてくれます。6人でデビューします」
などと励まされ、実際、6人でのデビューが実現。ただ、高城は頑張りすぎたのか、数ヶ月後には激痩せを心配されるほどになった。
それでも、この一件はグループの認知度を高めたし、高城もその後、激痩せ状態ではなくなり、今も元気に活動している。ももクロ自体、息の長い活躍を続けていることを考えると、この体重エンタメ化作戦は成功だったといえる。
冒頭で触れた堀未央奈にしても、AKB系や坂道系の出身タレントが増え続けるなか、ネットニュースになるほどの注目を浴びられたわけだ。また、乃木坂がルックス偏差値の高さでブランド視されるのも、こうした自分磨きをひとりひとりが怠っていないからだろうとうなずけるものもあった。
そういえば、乃木坂は一昨年「みんなの献血」キャンペーンに起用され、堀や齋藤飛鳥、山下美月といった5人がイメージキャラクターを務めた。その際、全員が献血未経験であることが話題になったが、ネットでは「体重制限に引っかかるメンバーもいるのでは」という声も聞かれたものだ。たしかに、30キロ台では献血ができない。ある意味、2年前の疑問の答え合わせができた気分だ。
とまあ、体重とは単なる数字ではない。芸能界を生き抜くうえで「武器」にもなるし、体型データがあまり公開されなくなった現代では、その効果も大きい。そのかわり、炎上したり、その数字にとらわれて病んでしまったりというリスクもあるが、それでもなお、武器にする勇敢さはなかなか好もしいものでもある。
そんなせっかくの武器をほとんどの人が捨ててしまうのはもったいないし、体型データの公開が当たり前な時代の再来も期待したいものだ。
もちろん、歌や芝居といった仕事一本で生き抜いてやるという生き方もアリだろう。ただ、プライベートも体重も、自分のすべてを売りにして、という生き方もまた、芸能人らしさなのである。
文:宝泉薫(作家・芸能評論家)