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生死を偽装した信玄の真意とは?

武田信玄の遺言状 第4回

武田信玄像
覇王信長が最も恐れた武将・武田信玄。将軍足利義昭の求めに応じて上洛の軍を起こすが、その途上病に冒され、死の床につく。戦国きっての名将が、武田家の行く末を案じて遺した遺言には、乱世を生き抜く知恵が隠されていた――。

 ことに自分が最も頼りとする一族の典厩信豊(てんきゅうのぶとよ、信玄の甥)と穴山信君(あなやまのぶきみ、母が信玄の姉)は、陣代となる勝頼を屋形のように盛り立て、万事を執り行い、信勝を信玄のように重んじて欲しいと遺言した。

 信玄はなぜこうして生死を偽装したのか。勝頼は本来の跡継ぎではなく、主従が一体となって敵に立ち向かう体制に弱点があったのだ。しかも、周囲を信長・家康の新興勢力と、上杉謙信や北条氏といった永年の宿敵に囲まれて、非力な勝頼では乗り切れないと心配したからだった。

 信玄が後事を託した息子は勝頼であった。勝頼は四男である。彼は武田氏の息子が名乗る「信」の一字を持たない。なぜなら、信玄が殺した諏訪頼重(すわよりしげ)の娘・諏訪御料人が産んだ子だからである。(続く)

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楠戸 義昭

くすど よしあき

1940年和歌山県生まれ。立教大学社会学部を卒業後、毎日新聞社に入社。学芸部編集員を経て歴史作家に。著書に『戦国武将名言録』『この一冊でよくわかる!女城主・井伊直虎』(以上PHP文庫)、『吉田松陰「人を動かす天才」の言葉』『坂本龍馬の手紙 歴史を変えた「この一行」』(以上三笠書房・知的生きかた文庫)、『山本八重』『文、花の生涯』『井伊直虎と戦国の女城主たち』(以上河出文庫)ほか多数。


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