Scene.15 熱い風に、灼けるって!
高円寺文庫センター物語⑮
「店長! 三人じゃ、無理ですよ。ほかになにもできない・・・・」
「お客さん、どうもありがとうございます。
今日は、いっぺんにどうしたんですか?」
「本屋さんが、知らないの?
井上三太の漫画『TOKYO TRIBE2』で、ウエアが文庫センターで扱っていると書いてあったから買いに来たんだよ!」
「えぇ~、なにも聞いてないって!
内山くん、りえ蔵! 聞いてたか?!」
そりゃ3年前に井上三太さんのサイン会は、イーストプレスさんのお世話でやらせていただいていた。
そのご縁から直接、三太さんのブランドであるSANTASTIC!を通して「SARU」ブランドのTシャツやトレーナーをボチボチと販売してきていた。
「店長! 本屋を無視して掲載しちょるけんが、版元の祥伝社に抗議せんと!」
まさに責任者、出て来いって! 抗議電話。即日、担当編集者と営業部長が謝罪に来た。その件をゲゲゲの呑み会で話したら・・・・。
「えぇ! 店長。あんな、いいひとの石原部長をイジメたの?!」って、大ブーイング!
「いやいや、違うってば!
聞いてよ! って、修羅場は経験しないと、わかんないか・・・・・」
「店長。大正堂さんの、若旦那さんから電話ですよ」
「毎度です。
電話なんて珍しいじゃないですか! いつもワンちゃんの散歩で寄ってくれるのに」
「店長、急ぎだよ!
万引きの込み入った話だからさ。バイトくんには注意しろって言って、うちに来て」
高円寺北口の老舗街角書店、大正堂の若旦那さんからの珍しい呼び出し。とにかくみんなには、万引きに厳重注意を促して行くことにした。
最短ルートで向かうことにすると、すぐに中古衣料品店がある。ここはたまにアロハシャツの掘り出し物があるんだけど、今日はスルー。
そして、焼き鳥の大将3号店。パートのママさん達が、鶏肉に串刺して仕込み中だ。
「ども、また飲みに来ますねぇ~」
大将のママさんは、うちに写真のプリントに来るお客さんでもあるからご挨拶。
大将を右に曲がると、ブックス・オオトリ。当時の高円寺では一番広かったけど、100坪あったかどうか? 入荷数の弊店比較で、行ってたくらいかなぁ・・・・
そして、突き当たりにはノア画材店。
つげ義春さんのリトグラフ『岩瀬湯本温泉』を、額装して貰ったのはこちら。店のウィンドウ・ディスプレイにも買い物はここだったな。
ノアさんを左折すると、よろず屋的に便利なスーパーのオリンピック。そして、往き合うのが駅前からの高円寺純情商店街が庚申通りに名を変える四つ角。高円寺は商店街がなんとも多く、この庚申通りは比較的狭いわりに賑わいはダントツかも知れない。
ここにある精肉店のメンチが! と言う誘惑を振り切って、右に歩けば大正堂書店さん。
「こんにちは、文庫センターです。若旦那さんに、呼ばれてきました!」
大正堂さんは、地元のおばちゃま主体のパート体制。外商の配達バイトは、ボクのプラモ仲間。今日は配達なのか、休みなのか、いないなぁ・・・・。
「お!店長、わざわざ悪いね。
実はさ、中年二人組のプロ万引き犯が高円寺に現れたんだっていうのよ! 背の高い方がレジでトラブル仕掛ける間に、小太りの方が犯行に及ぶ手口なんだっつうから気をつけろよな」
日本書店商業組合連合会中野杉並支部という、本屋のおやじさん団体の結束は固かった!