Scene.16 立ち止まってなんかいられない!
高円寺文庫センター物語⑯
念ずれば通ず。と言うけれど、そのための地道な努力をするかどうか・・・・。自分が汗かき、ため息をつくこともなけりゃ夢想は形にならないって!
ラピュタ阿佐ヶ谷のオープニングパーティーに招かれてから、考え続けていた。地下のシアターでなにかイベントができないかと、思い続けて半年。
青林堂時代からのおつき合い、浅川さんのご苦労で「名盤解放同盟」のライブができることになった!
正しくは「幻の名盤解放同盟」と言って、サイン会やトークショーで親しくさせていただいている漫画家根本敬さんのバンド。
音楽評論家の湯浅学さんと、デザイナーでもある船橋英雄さんとのユニットで、商業的に恵まれずに消えていった昭和歌謡を紹介する活動を続けていた。
湯浅学さんは、ブルース・インターアクションズから出版した『人情山脈の逆襲』。幻の名盤解放同盟の名義で出版した『定本ディープ・コリア』(青林堂刊)『ディープ歌謡』『夜、因果者の夜』(共にペヨトル工房)。文庫センターではロングセラーになっていたのでイケるイベントになると思っていた。
会場の入り口では、受付とTシャツやCDなどのグッズ販売をりえ蔵とさわっちょが担当。会場担当の鈴木くんとフリーで内山くんの配置なら、滞りなくイベントをやり遂げられるだろうって自信ができてきていた。
「店長、どう?」心配なのか、根本さんが受付に現れた。
「大丈夫ですよ! そろそろ、開演の挨拶をするのでスタンばってください」
ライブが行われるフロアを見下ろすように、階段状にゆとりある木の観客席が埋まっていた。舞台が盆地の底状態というのが、ユニークなんだな!
主催者としての挨拶を済ませ、根本さんにバトンタッチ。すぐに受付に行って、しばらくは入場料の現金勘定とグッズの在庫確認に追われて小一時間。
「もぉ、お客さんも来ないだろうからさ。ちょっとだけでも、ライブを観ようよ」と、客席の上に設えられた鉄骨骨組みの特等席へ。ツェッペリン飛行船の骨組みにいるようで、気分良かった!
やったなぁっと、充実感に包まれて中央線からの車窓を眺めていたら浅川さんから携帯に電話!
「店長! 打ち上げの居酒屋にいるんですけど、根本さんも店長から出演料を貰ってないそうで誰もお金を持っていないんですよ!」
えええ、忘れてた! 慌てて、彼らがいる居酒屋に駆けつけた! テーブルの上にまだ何もないって、注文もしないで待っていたの?!
「え、はい? もちろんですよ! ありがとうございます!」
「店長、なんの電話ねぇ」
「内山くん、みんな! 双葉社さんからさ、中島らもさんのサイン会どうかって!」
「わあ! メジャーでも、らもさんなら高円寺的で嬉しいですよね!」
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