グローバルダイニング「時短命令は違法、特措法は合憲判決」と「緊急事態時の統計」とは【篁五郎】
次に特措法は違憲なのかどうか。判決文には以下のように記載されている。
《(1)法令違憲(営業の自由)
特措法45条2項及び3項所定の規制は、同法の目的(筆者注:1条)に照らして不合理な手段であるといえないから、これら各条項が原告の営業の自由を侵害し、法令違憲であると認められない。
(2)適用違憲 処分違憲
ア 営業の自由
本件命令発出日に新型インフルエンザ等緊急事態ではなかったとの原告の主張は採用できないこと、都知事が本件対象施設において実施されていた感染防止対策等の検討を怠ったとしても、特措法72条2項により立入検査等を行う義務を負うとはいえないこと等に照らし、原告の主張は、採用することができない。
イ 表現の自由
原告は、都知事は原告代表者個人(筆者注:長谷川耕造グローバルダイニング代表)の意見表明を問題視し、他の飲食店の夜間の営業を誘発するおそれなどないのに、本件命令を行う理由において、これがある旨断定したとして、原告の表現の自由が侵害された旨主張する。しかし、上記部分は、本件命令に係る措置命令書に付記された原告代表者の考え方に対する批判や攻撃を目的とするものではなかった。
(中略)
本件命令は、原告に対する報復や見せしめではなく、同命令に違法な目的があったとは認められない。
したがって本件命令を行う理由のうち上記部分が原告の表現の自由に対する過度な干渉として憲法21条1項に違反すると認めることはできない。
ウ 法の下の平等
都知事が夜間の営業を継続していた2000余りの店舗中、本件対象施設のほかには数店舗に対してでしか、45条3項命令(筆者注:特措法)を発出しなかったのは、争点1(本件命令の違法性)の判断において事情として考慮した通りであり、更に平等原則違反の有無を判断する必要性を認めない》
少し引用が長くなったが、要約すると以下の通りだ。
「特措法は国民生活及び国民経済に及ぼす影響が最小となるようにすることを目的としており、憲法25条2項にも記載されているから違憲ではない」
「営業の自由を特措法は侵していないし、都知事はグローバルダイニング長谷川代表の表現の自由を侵害するために営業停止命令を出した証拠はないから違憲ではない」
「特措法は法の下の平等も侵していないので違憲ではない」
グローバルダイニング社は、この点を不服とし、長谷川代表は「今回の判決にはまったく納得ができません」と述べて即日控訴した。
一方、東京都の小池百合子知事も「命令は医療や経済、法律などの専門家から妥当であるとの意見を得るとともに、国とも情報を共有し発出した。感染防止対策上、必要かつ適正なものであったと認識している」とコメントを発表しており、控訴審で争いが続くことが決まった。
高裁での争点は「特措法は違憲であるかどうか」に絞られたと言える。