学校現場を破壊し続ける文科省の無知蒙昧 「受講拒否に職務命令 教員研修、新制度の指針案」に唖然【西岡正樹】
「「欠員埋められない」教職員の欠員3000人超が未配置 解消目処は8人のみ」病気などにより休職した教職員の欠員が補充出来ずに「未配置」となっている人数が、3000人を超えた、というニュースがいま話題になっている。その根源的原因のひとつとして、現場教師の立場から告発した記事がこれだ。
6月28日、毎日新聞朝刊に掲載された記事に唖然とした。
以下冒頭を引用する。
「文部科学省は27日、教員免許に有効期限を設けていた教員免許更新制を7月に廃止した後、来年4月から始める新たな研修制度の指針案をまとめた。受講を拒否する教員には職務命令で研修を受けさせると明記。オンライン研修などでの習得内容を定着させるため、研修後のテスト実施やリポート提出も求める。指針案は27日の中教審部会で大筋了承された。
文科省は大まかな指針は示すが、受講時間数などの詳細は各都道府県教育委員会などに制度設計を任せる。指針案は、オンライン活用が広がっている現状を受け、修了後のテストやリポートが必要と指摘。校長は教員が学ぶべき分野を助言する。再三の助言に従わなければ職務命令を出すことを求める。命令に違反すると懲戒処分の対象になる。」
■「研修すれば教員の指導力があがる」と本気で思っているのか!
「研修すれば教員の指導力があがる」と思っている文教族議員、文部科学省の方々に言いたい。
まず、教員の指導力が下がっているというのであれば、何をもってそのように理解しているのであろうか。その根拠を示していただきたい。また、今学校現場がどのような状況にあるのか、自分の目で確かめていただいたのであろうか。
1990年代から学校現場は大きく変わった。1990年代初めまで、地域の学校は子どもの成長に欠かせないものであり、教育の第一優先であった。だから、保護者も学校に任せるところは任せ、その足りないところを自分たちが補うと考えていたし、地域も学校にとても協力的だった。子どもを真ん中にした3者の関係が成立していた。それが可能になったのは、子どもにかかわる大人たちが同じ方向を見て、子どもを育てようという共通する思いがあったからだ。子どもが1学級に40人いようと、45人いようと一人の教師で学級運営ができたのも、学校と保護者、そして地域が同じ方向を向き、関係性が出来上がっていたからである。
しかし、1990年初め以降は、社会の多様化と共にそれぞれの家庭がそれぞれの教育観で子どもを育てる傾向が強まり、学校に対しても協力的か否かは、それぞれの家庭の教育観によって決まるようになっていった。2000年代に入るとその傾向がますます強くなり、家庭の教育観を地域の学校に押し付けてくる保護者さえ現れてきた。このような多様な時代になっても1学級に30人以上の子どもたちが学んでいる現状は変わらない。そして、現場の教師は学級運営だけではなく、それぞれの家庭の多様な要求を受け、それに対応し続けているのだ。経験を重ね、ベテランといわれる教師さえ困惑している多様化した子どもの言動、保護者の要求。それを経験年数の浅い1人の教師が容易に対応できるとは思えない。
このような時代の流れとともに変化してきた現場では、何よりも大事なのは子どもとの関係性であり、保護者との関係性なのだ。校長先生という立場であっても、その立場だけで話を聞かせることはできない。教師という立場だけで子どもや保護者に自分の思いや考えを伝えることはできないのが現状だ。子どもや保護者と信頼関係つくるために必要な時間や場を創るのも大変な状況なのに、さらに研修や試験をするというのだから、何をかいわんや、だ。
政治家のみなさん、自分の足を使って学校現場をみてください。本当に指導力を心配するのであれば、教師が足りなくなった現状をきちんと把握して、政治家の政治力を発揮してほしいものです。
文:西岡正樹