アウトとセーフの基準はなんだ? テレビの笑いの差別的表現3つの疑問【松野大介】
(2)海外の笑いならいいのか
『ビッグバン★セオリー ギークなボクらの恋愛法則』は、アメリカのコメディドラマシリーズで、2019年まで放送されていました。日本では、2009年から2021年までスーパー!ドラマTV(cs310)で放送。
内容の説明は割愛しますが、主要キャストであるインド人やユダヤ人への差別的な台詞はひっきりなしに観られます。
あるエピソードでは、ホーキング博士がテレフォンセックスする様子のモノマネシーンがある。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)の車椅子の学者のモノマネを日本のドラマがやったら、アウトどころか、大問題になるでしょう。
しかし海外ドラマならスルー。日本で放送される条件は同じなのに、です。
◆海外の笑いの番組ならOKなのか。
◆地上波はダメだが、CS等ならいいのか。
かつて北野武映画は、人が大勢殺されるバイオレンスな面が批判されましたが、同時期、日本で公開される米国のアクションバイオレンスはまったく批判されなかった。
海外ものなら差別表現やコンプライアンスなどの対象にならないならあまりにいい加減だし、CSなどの低視聴率ならかまわないなら、真の差別表現摘発とは言えない。
その点をクリアにしてほしい。
(3)過去の笑いなら放送して良いのか
志村けんさんが逝去して以来、テレビでは過去のドリフターズのコントが地上波のゴールデンタイムで放送されています。「伝説のコント」などと崇められる時もあります。
◆何十年も前の映像の笑いならいいのか (現代にオンエアするという条件は同じなのに) 。
上島竜兵さんが亡くなると、彼の痛みを伴った笑いは、最近のものまで尊い芸にされます。これは志村さんのセクハラなコントも同じです。
同じ笑いを今の芸人がやれば、批判の対象になるでしょう。
◆故人になれば批判の対象から外れるのか。
さらに言えば、過去にさかのぼって「この笑いはコンプライアンス違反」と、評価をひっくり返していいとは私には思えません。
それは、その時代に生きた人々の感性や喜びを否定することになると思いますが。
■コンプラハラスメントの時代に抗って
ある芸人がSNSにて「コンプライアンスきつくて時事ネタや風刺ネタすらキー局のゴールデンではできない。コンプラハラスメント」と嘆いていました。
制作側の自主規制もあるでしょうが、このままではテレビの笑いは萎縮し、不幸な事態に向かいそうです。
日本の芸能マスコミはそもそも芸能の充実や発展など考えていません。ゴシップやスキャンダルが欲しいだけで、差別的と批判された番組と人気芸人をバッシングして記事に出来ればいいと考えているので、問題は解決に向かわないのです。
テレビのコンプラ問題は、元芸能人の作家として問題提議していきたいと思います。
笑いの先進国の英米などとの差別表現の違いをBPOに進言したいですね。
文:松野大介
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