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ワカメちゃんが教えてくれる、フランス流人生の楽しみ方

ワカメちゃんのモデルとなった、長谷川たかこ新刊『ワカメちゃんがパリに住み続ける理由』発売記念インタビュー

日曜夕方のお茶の間を賑わせてくれる「サザエさん」。今年、放送70周年を迎えたとか。
その番組内のアイドル的存在、ワカメちゃんがかれこれ30年ものあいだフランス、パリに住んでいると知っていましたか? 一家団欒という言葉が似合う、昔の日本の家族の姿を象徴するサザエさん家のワカメちゃんがなぜパリに飛んで行ったのか? そして、外に飛び出してみて日本はどのように見えるのか?
長谷川町子氏の姪であり、ワカメちゃんのモデルである長谷川たかこ氏に聞きました。

 

――長谷川さんは、フランスに住み30年という年月が経たれていますが、時間を経ていくうちに、フランスと日本に対して変化していく思い、新たに気づく点などはありますか。 

 

フランス人が関心のある日本の部分とは?

日本ではフランスのモードやライフスタイルや料理や食品が早くから注目されて、取り入れられてきましたよね。 
 フランス人の日本に対する関心は――自動車やマンガ、ゲームは別として――ずっと後になってから、ここ15年くらいですけど、伝統文化やデザイン、料理、文学……などの分野ですごく高まっています。
 日本人の性格も、例えば福島のあと、被害者たちの忍耐、立ち直っていこうとする勇気にフランス人は驚嘆し感動していました。日本人であることをより誇りに思います。
 一方で、住んでいる者の目で見ると、考え方、生き方は逆に開いていっています。
 例えばカップルのあり方にしても、フランスでは結婚と同じ権利があるパックスという同棲制度ができ――それが出生率を上げた要因のひとつ――数年後に同性の結婚が認められました。因習を破って、今の時代に合った制度を作っています。
 日本では、働きたくても働けない女性がいる一方で、将来専業主婦と希望する女性がいるというのは保守化している気がします……。これは女性の地位や独立と深く関係していますよね。
 日本は、欧米より進んでいる分野がたくさんあるのにもったいないのではないでしょうか。考え方、価値観が変わるのには時間がかかるでしょうけど……。

 

――小さな頃からフランスへ行く準備を無意識に行っていたとお伺いしていますが、実際にフランスに来てみて、予期しなかった、想像を遥かに超えていた部分、戸惑った部分はありますか。

 無意識でも意識的にでも、自分の好きなこと、興味あることしか準備しませんから……。あまり実生活には必要ない知識ばっかり蓄えていたので、現実には戸惑うどころか、真っ青になることも多々ありました。外国にポンと来て、ひとりで暮らすのがどういうことかわかっていなかったってことです。
 フランスでは、うちを一歩出ると風は冷たくて身構えなくてはいけない、日本にいたときはいつもぬるま湯に浸かっていたみたい、と思いました。
 つまり色んな意味で無防備だったということです。

 

――実際に行ってみて、フランスと日本で「一番ここが違う!」と思ったことといえば、何でしょうか。

 一番違う点は、難しい質問ですね。切り口によって“違い”が異なるから……。フランスは多民族で、色々な宗教、生活様式、文化が混在しているから、子供のときから、自分とは異なる人種、考え方、価値観があるというのを肌で感じて育ちます。つまり“違い”を認めるということ。それはひっくり返すと“人と違っていていい自由”です。
 ひと言でいうと“自由さ”でしょうか。人の目、価値判断から自由であるということは大きく違うかもしれませんね。

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  • 長谷川 たかこ
  • 2016.04.26