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お祭り騒ぎのColabo問題 炎上が決して収まらない理由

 このルール作りをしているメンバーの中に、渦中の一般社団法人Colabo代表の仁藤夢乃氏が構成員として参加しています。Colaboの活動はまさに困難な問題を抱える女性を支援する活動であり、有識者として参加していることそのものは自然なことだと私は認識しています。有識者の政治活動に問題があるのではないか?という意見があるかもしれませんが、こちらは多々考慮するとややこしくなるので、今回は触れません。ただ、私は「有識者会議の資料のみ」で判断するなら問題がないと考えています。実際に、これらの行政機関と協働する民間団体の話を聞かずに法律を改正するわけにもいかないでしょう。利益相反がない限り。

 そして、困難女性支援法の目的と基本理念は「女性の福祉」「人権の尊重や擁護」「男女平等」といった視点であり、 「困難な問題を抱える女性」とは、「性的な被害、 家庭の状況、地域社会との関係性その他の様々な事情により日常生活又は社会生活を円滑に営む上で困難な問題を抱える女性(そのおそれのある女性を含む。)」となっています。

 基本方針では、特に性的な被害を受けた者に対する支援や、被害からの心身の回復、安定的な生活への中長期的な支援が重要だとされています。端的に言えば、親から性的虐待を含むDVを受けた女の子や、望まない妊娠をしてしまってハイリスクな状態になっている女性をどうするのか、というのは、本来この法律改正の重要なポイントですから。

 したがって、困難女性支援法定義する状況に当てはまる社会的にハイリスクな女性や、将来的に問題を抱える状況になる可能性がある女性を含んでいます。制度の目的規定や立法趣旨を考慮するとこういった文言になって然るべきですが、将来的な可能性にまで言及しているため、この点について制度の悪用に対する議論がなされていません。ハイリスクで支援を受けられる条件を満たす自立した女性を貧困ビジネスをもっぱらとするような悪意ある第三者が利用することへの対策などの議論を深めるべきだと感じます。だからこそ、利益相反は今回の困難女性支援法案を検討するうえで慎重に排除しなければならないものなのです。

 また、DV被害者については、配偶者暴力防止等法及び困難女性支援法の関係性を整理した上で例を挙げていますが、秘匿性の必要性が高い場合と、地域に開かれた社会生活等が重要である場合が想定されています。これはこれで大事な論点で、現状のままでは同じ施設で保護するミスマッチが起きる懸念について意見書で進言されていました。しかし、基本方針案では民間団体も含む現場に予算をつけて丸投げしているような形になっています。その活動が適正に行われていたかどうかを通常の監査で行えるすべがなく、これらの利益相反の問題を解決できる糸口を具体的に示す必要性があるのではないでしょうか。

 もう一点、Colaboシェルターがインターネット上でタコ部屋と揶揄されていましたが、女性自立支援施設の設備及び運営に関する基準(省令)(案)について、「居室の入所定員」いわゆる、1部屋何人を基準にするかというルールについて、有識者の多くから個室にしてほしいと意見が出ていました。その結果、「第13条 1の居室の定員は、原則1人とする。」と明記されることになり、困難女性支援法が施行されれば、困難な問題を抱える女性がタコ部屋に入れられることは原則なくなり、個室が提供されることになりそうで良かったと思います。ただ、その場合はシェルターなど施設の稼働率が問題となり、空き部屋の多いシェルターでも公費が満額支給されて「シェルターを建てた民間団体のやりたい放題」のような利益相反が行われないような規定はどこかで必要になるでしょう。

 困難女性支援法が出来た背景や、基本方針等に関する有識者会議の意見書を読む限り、今のところ基本方針に関しては大きな問題点は見当たりません。利益相反が万が一発生した場合の監査をどうするかという法律の運用面の問題があるぐらいでしょうか。意見書の内容も、主に現場の声を要望として基本方針に盛り込んでほしいという意見が多く、有識者の構成員も現場を知る人たちから構成されており、有識者同志で喧嘩に近いような現場の不満を含んだ意見の対立がいくつか見られる等、現場を改善したいという強い思いが意見書に読み取れました。

 この法律を利用して、税金を吸い取ろうとしている陰謀論を見聞きしますが、そもそも数十年もの間実際に税金を使って運営されてきた行政機関や、助成金や寄付によって活動してきた民間団体を新しい法律の枠組みの中で包括的な協働体制を作り、困難な問題を抱える女性を支援しようという「福祉」の話であることを伝えておきたく思います。

 とはいえColabo問題はいまもインターネット上で炎上し続けております。が、すでに法律は成立しており、利益相反が万が一発生する懸念以外には問題が見当たりません。なのでこれはまさに「後の祭り」なのです。

 

(注釈)

(1)困難な問題を抱える女性への支援のための施策に関する基本的な方針(案)に関する御意見の募集について

(2) 困難な問題を抱える女性への支援のための施策に関する基本的な方針(案)に関する御意見の募集について

(3)困難な問題を抱える女性への支援に係る基本方針等に関する有識者会議

 

文:谷龍哉

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谷龍哉

たに りゅうや

谷 龍哉(たに・りゅうや)

1983年生まれ。三重県伊勢市出身。ネット情報アナリストとして、インターネット上の社会事象や問題発生の経緯の情報収集、分析に従事。

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