AI時代に「仕事を奪われる人」or「仕事を任される人」本質的な習慣の差【福田和也】
「自分の頭で考えること」「礼儀正しくあること」
■「礼儀正しい」ということは、つまり「油断をしない」ということ
対面している相手が、一体どんな相手なのか、何を考えているのか、まったく分からない、自分にいかなる敵意や思惑を持っているのか分からないという認識、油断しないという態度が、礼儀正しい姿勢に出るんだ。
僕も時々、仕事で無作法な人に会う。
挨拶をしないとか、とても高飛車な態度をとるとか。
でも、僕はそういう人にたいしては、ある種の安心をしてしまう。
というのは、そういう人というのは、結局たいしたことがないんだね。
無作法な態度をとるというのは、相手を見くびっているということだ。
見くびるというのは、失礼である以前に、認識が甘い、ゆるい、ということなんだな。
どんな相手にたいしても、礼儀正しい人というのは、たとえ立場的に自分がその場では上にあるように見えても、相手がどんな係累(けいるい)や力をもっているか分からない、あるいは、今はたいしたことがなくても、そのうちに何か大変な存在になるかもしれないといった、恐れというか、警戒心をもっている人なんだね。
そういう「恐れ」のようなものが、礼儀の底にはある。
つまりは、どんな時にも、弛緩(しかん)しない、緊張しているということが、礼儀の基本なんだ。
物事の「基本」 「根本」を知るのが大事なのは、機械的にならないためだ。そういうことになっているから頭を下げる、会社に行く、仕事をする、ということに馴れると、どんどん自分の頭で考えなくなってしまう。
会社という圧倒的な組織のなかで、生活しながら、いかに自分の頭で考えるか。
それが、さしあたって、君に課せられた課題だね。
<著者プロフィール>
福田和也 ふくだ・かずや
1960年、東京都生まれ。慶應義塾大学文学部仏文科卒業。同大学院修士課程修了。慶應義塾大学環境情報学部教授。93 年『日本の家郷』で三島由紀夫賞、96年『甘美な人生』で平林たい子賞、2002年『地ひらく 石原莞爾と昭和の夢』で山本七平賞、06年『悪女の美食術』で講談社エッセイ賞を受賞。著書に『昭和天皇』(全七部) 『悪と徳と 岸信介と未完の日本』『大宰相 原敬』『闘う書評』 『罰あたりパラダイス』『人でなし稼業』『現代人は救われ得るか』『人間の器量』『死ぬことを学ぶ』『総理の値打ち』『総理の女』『福田和也コレクション1 本を読む、乱世を生きる』 等。最新刊に『保守とは横丁の蕎麦屋を守ることである』が4月15日に発売予定。
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これほどの『知の怪物』に伴走できたことは編集者人生の誉れである。」
◆時代に屈しない感性と才覚をいかにして身に付けるか◆
本を読むのは、人生を作ること。
生きることを、世界を、さまざまな人々を、出来事を、風景を、しっかりと味わい、その意味と感触を把握し、刻み込むためには、最高の訓練だ。
本はただ味わいを作りだすだけではない。
読書は、時間を作りだす。(中略)
書物には時間は組み込まれていない。ただ、紙に印刷された文字があるだけだ。
書物の「上演時間」は、人によって千差万別である。
しかもそれは、まったく作品自体によっては決定されない。
ただ読者によって、つまりは読み、理解し、想起するという精神の働きだけによって決定される。
このことの恐ろしさ、面白さを理解できるだろうか。
(「本は、人生を作る」より)
人にたいする好奇心は、麗しい人類愛にくらべれば、遥かに俗っぽいものでしかありません。
けれども好奇心は、人間の悪徳や醜悪さに負けません。悪や醜さは好奇心にとっては、意気を阻喪(そそう)するものではなく、むしろ美味なものです。
好奇心は、人間にたいする絶望的な真実にも、耐えることが出来ます。それは美しくはないかもしませんが、人間という卑小で俗にまみれた存在を、最終的に肯定する力をもっているのです。
さらに云うならば、人間にたいする好奇心は、人間だけで成り立っている世間、世の中にたいする興味であり、そこで積極的に生きるための、大きな支えになるのです。
人にたいして好奇心をもつことは、本書のもっとも大きなテーマである、果敢に現世を生きることの、核になりうるのです。それは、生きること自体への興味を深めてくれます。
(「悪の対話術」より)