美男美女しかいないヘアカタログはもう古い!?
現在観測 第29回
「うわ!なんだこれ!きっつ~!」
教室の反対側で明らかに人をバカにする声が聞こえてきた。私と同じように髪型を少しだけ変えてきた奴の財布から、とある男性アイドルグループの切り抜きの写真が出てきたのだ。その瞬間、そいつのあだ名は「K」になった。アイドルグループのメンバーの頭文字だ。もちろんただの「K」ではない。「K(笑)」だ。私は冷や汗が止まらない。なぜならばつい先日、私も俳優Tの写真の切り抜きを美容室に持っていったばかりだったからだ。
「あの切り抜き捨てたよな?丸めてゴミ箱の下の方にもぐり込ませたはず。大丈夫大丈夫…でも万が一、俺の財布から同じように出てきてしまったら…」小学校の時に、流行っていたカードゲームを盗んだ奴がいると、ホームルームで犯人探しが行われた。隣の席の子は顔面が真っ青になっていた。誰が見てもコイツが犯人だとわかるほど震えていた。私はその子と同じように真っ青でブルブル震えていた。何も悪い事をしていないのに。
◆きっとみんなカッコイイ髪型がしたい
そんな経験があったからか、筆者は大人になった今も美容院でオーダーをするのが苦手だ。美男美女ばかりが載っているヘアカタログを見て、「この髪型かっこいい!」「こんな可愛い髪形にしたい!」と思っても、素直にその画像を美容師さんに見せる事はとてつもなく勇気がいる。
「お前がこの髪型?」「たまたま鏡というものを遭遇しない人生を送ってきたのかな?」と思われるんじゃないかと恐れてしまう。そして「全体的に短くして下さい」など曖昧な事を言って理想の髪型を伝える事ができない。そういう経験をしたことがある人は他にもいるはず!
そうして誕生したのが、ヘアカタログ「ブサヘア」だ。かっこいい髪型やかわいい髪形をした、ブサイクしか載っていないヘアカタログだ。
「こういうのを待っていた」「ヘアカタログが身近な存在になった」と、ありがたい事にこの「ブサヘア」は大きな反響をいただいている。同じような事を考えている人はたくさんいるのだ。あの時、顔面を真っ青にして震えていた自分が救われた気がした。そして、ひとつ気付いた事がある。
「うわ!なんだこれ!きっつ~!」と大きな声を上げた奴も、「K(笑)」と人の事を蔑んだ奴も、みんな同じだったのではないだろうか?みんなそいつみたいにカッコイイ髪型をしたかったのではないだろうか?
筆者のように、“カッコつける”“可愛い子ぶる”というラインをどうしても超えられない、自意識過剰な方々に「ブサヘア」が役立ってくれたらうれしい限りである。
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