榊原郁恵から堀江しのぶ、広末涼子、AKB48、吉岡里帆。水着はアイドルの通過儀礼である【宝泉薫】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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榊原郁恵から堀江しのぶ、広末涼子、AKB48、吉岡里帆。水着はアイドルの通過儀礼である【宝泉薫】

 

■とにかく明るい安村にハダカ芸を思いつかせたAKBアイドルとは?

 

 しかし、90年代後半には、スレンダー系の逆襲と呼びたいような状況も生まれた。その究極は榎本加奈子だが、時代の頂点にいた広末涼子も水着姿を披露。「popeye特別編集」による写真集「Happy20thBirthday ヒロスエ、ハタチ。」では、中学時代、陸上部で鍛えたというしなやかな肢体が鑑賞できる。

 こうしたスレンダー系にもかなりの需要があることは、2000年代以降も小倉優子あたりが証明するわけだ。

 とはいえ、アイドルと水着の蜜月は20世紀とともに終わった感がある。「アイドル水泳大会」的な番組も、98年の「女だらけの水泳大会」(フジテレビ系)が地上波では最後だ。

 それでも、2010年前後にはAKB48が水着をフル活用して人気を拡大。全員が水着姿で歌い踊るMVは、アイドル版「リオのカーニバル」ともいうべきカオスを生んでいた。

 その公式ライバルとして作られた乃木坂46は基本水着NGで、それぞれの写真集でのみ解禁する戦略。これが当たり、多くの写真集がベストセラーになっていく。

 写真集といえば、AKB「神7」のひとり、渡辺麻友の処女作「まゆゆ」も、水着や制服が多用されたアイドルらしいものだった。その表紙に使われた体育座りポーズから、とにかく明るい安村はあのハダカ芸を思いつく。優れた文化は連鎖するのだ。

 しかし、4、5年前からAKBグループは水着の展開を弱めている。未成年メンバーの場合は特に「児童ポルノ的だ」という批判を招きやすいことからの「自主規制」でもあるらしい。水着撮影会中止騒動をめぐる記事にあった「妙な正義感」がここでも芸能のあり方を歪めているわけだ。

 そういえば、今回の騒動では吉岡里帆の過去発言が切り取られ、巻き込み事故みたいになった。彼女は女優としてブレイクする直後あたりまでグラドル的な活動に積極的だったが、その時期を振り返り「私は水着姿なんて絶対出したくなかった」とも言っている。そこが切り取られ、水着撮影会への批判に悪用されたのだ。

 じつはその発言のあと、彼女は、

「今となっては、グラビアは本当にやってよかったです」

 と、総括していた。「(女優という)自分の夢をつかむために、それをやってほしいと求めてくれる人がいる以上、その人たちに応えるのが私の生き方」「だから、自分で選んだという自信はあります」と言うのである。

 実際、葛藤を経ての覚悟が伝わるからか、彼女の水着姿は魅力的だった。コスプレイヤーのえなこが示すプロ的になりきる覚悟もそうだが、アイドルの水着には自らの性を売り物にするうえでの覚悟が感じられ、そこが輝きを生み出すのだ。

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宝泉 薫

ほうせん かおる

1964年生まれ。主にテレビ・音楽、ダイエット・メンタルヘルスについて執筆。1995年に『ドキュメント摂食障害―明日の私を見つめて』(時事通信社・加藤秀樹名義)を出版する。2016年には『痩せ姫 生きづらさの果てに』(KKベストセラーズ)が話題に。近刊に『あのアイドルがなぜヌードに』(文春ムック)『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、最新刊に『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)がある。ツイッターは、@fuji507で更新中。 


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