恥ずかしながら、誰よりもたくさん婚活をしてきた。こんなに出会えるのにどうして成婚できない?【石神賢介】
アプリ、相談所、パーティー、バスツアー……。いとも簡単にマッチングできる現代の婚活事情
婚活を続けていると楽しくなってくる。今の婚活アプリや婚活パーティーを利用すると、次々と出会うことができるからだ。やめられなくなってしまう。そんなことをくり返すうちに、いつのまにか結婚を目的に婚活をするのではなく、婚活そのものを楽しむようになっていた。約30年にわたり、あらゆる婚活にトライしてきた著者は気づいたら初老になっていた。現代の婚活事情を赤裸々に描いた最新刊『婚活中毒』から一部を抜粋してお送りする。
コロナ禍以降、婚活アプリは婚活ツールのメインストリームになった。アプリで出会って結婚するカップルは年々増えている。
2022年11月16日、11月22日の〝いい夫婦の日〟を前に明治安田生命が発表したアンケート結果によると、この年に結婚した夫婦の22・6%がアプリで出会っているという。5人に1人以上がアプリで結ばれた計算だ。新型コロナウイルスの感染拡大で、出歩く人は減った。感染が落ち着いてきた2023年春になっても、平日の夜8時くらいになると、街は静かになる。外での出会いが圧倒的に少なくなっているはずだ。
リクルートのブライダル総研「婚活実態調査2021」では、シングルの男女の21・8%がアプリを利用しているそうだ。
長い間、結婚にいたる出会いのきっかけはほぼ三つに限られていた。同級生や部活の同期や先輩後輩など学生時代からの仲間、社内恋愛をはじめ仕事で知り合った相手、友人・知人の紹介だ。
同じ学校に通い、同じクラスや部活に所属していれば、おたがいの人柄がわかる。一緒に働いていれば、仕事ぶりも協調性もリーダーシップもわかる。信頼できる友人・知人の紹介ならば、その友人・知人というフィルターを通過していることが安心感になる。一種の〝保険〟が機能している。
この三つでパートナーを見つけられなかった男女が頼るのが古典的なお見合いや結婚相談所だった。いまでいう婚活だ。
だから、婚活はモテない男女が集う、結婚へ向けての言ってみれば〝最終手段〟だと思われていた。婚活はパートナーを得るためにお金を使う恥ずかしい行いであり、友人・知人に知られないようにこそこそ行われていた。
2000年代後半、後輩の結婚披露宴で妙なスピーチを頼まれたことがある。新郎新婦を紹介し、仲を取り持ったという筋書きで話してほしいというのだ。
彼らは30代で、婚活アプリ(当時は婚活サイトといった)を介して出会い、結婚にいたった。そのことを親や親しい友人たちは承知している。しかし、仕事関係や親戚筋には知られたくないというのだ。婚活はまだ市民権を得られていなかった。