たまたまマッチングアプリで知り合った人が駆け出しのホストだった・・【神野藍】第9回
神野藍「 私 を ほ ど く 」 〜 AV女優「渡辺まお」回顧録 〜連載第9回
【行きずりの男とセックスするぐらいなら・・】
大学二年生の冬。
ほんとささいなことが始まりだった。たまたまマッチングアプリで知り合った人が駆け出しのホストで、実際にどういうものか気になり興味本位で着いていった。事前の知識もなかったので、見るもの聞くもの全てが新鮮だった。その人との関係はほんのわずか二週間ほどで終わったが、一度足を踏み入れた泥沼の深みへと沈んでいくのはいとも容易く、そこまで時間もかからなかった。
この頃に自分の性的行為をお金に換え始めた。借金なんて理由ではなく、単純に「こんな稼ぎ方があるんだ」とホストクラブを通じて知ったのがきっかけだった。何となくこれまでも飲み会のタクシー代などは貰っていたし、そこまで貞操観念があるわけでもなかったので、あまり抵抗なく始めてしまった。
マッチングアプリや行きずりの男とセックスするぐらいなら、対価をきちんと貰える方が得だと思っていたし、もちろん気持ち良いとか楽しいとは一度も思ったことがなかったが、きついことがあっても仕事だと思えば自分の気持ちの収拾はつけられた。職種はどうであれ、みんながそうやって自分なりに落としどころをつけて働いている。そんな風に考えていた。
ちゃんと一定の期間指名をして付き合いがあり、「担当」と呼ぶに値する男は一人だけだ。人形みたいに目鼻立ちは整っていて、六つ年上なだけあって雰囲気は落ち着いていた。ホストをはじめて一年経たないぐらいで、たまに飲みにくるぐらいのお客さんはいるものの、定期的に高額なお酒を卸す人はいないらしい。そういう理由もあって、シャンパンを一本卸しただけで感謝された。「こんな俺にごめんね。本当に無理しないで。」なんて健気な態度をとられたのを覚えている。