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“デスマッチのカリスマ”葛西純が激白「若いやつに座を譲るとかバカか!嫌なジジイになってとことん生きろ!」

葛西純選手のTwitter(https://twitter.com/crazymonkey0909/status/1690194314608197632より画像引用。本人提供

 

◾️「生きて帰るのが俺たちの仕事」その思いに至るまで

 

 ZERO-ONEを退団後、葛西は大日本プロレスのリングへ上がり、プロレス団体「プロレスリングFREEDOMS」の立ち上げに参加するなどデスマッチファイターとしてのキャリアを重ねていく。身を削るような戦いを繰り広げてきた葛西は、ファンや関係者から「デスマッチのカリスマ」と呼ばれるようになった。

 そのカリスマが自らの思いをリングで激白をしたことがある。それは2022年9月12日、国立代々木競技場第二体育館で行われた新日本プロレスのジュニアヘビー級でトップ選手エル・デスペラードとの一戦を終えた後であった。

 マイクを握った葛西はデスペラードへ語りかける。

「お前よ、オレッちと試合をする前に、こう言ってたな? 『燃え尽きて、死んでもいい覚悟でリングに上がる』ってよ。バカ野郎!

 世の中には死にたくて死ぬヤツなんていねぇんだよ。生きていたいのに、死ななきゃいけねぇヤツ、生きたいのに死んじまうヤツがゴマンといるんだよ。お前みたいに最高の人生を送っているヤツが死んでもいい覚悟でリングに上がるなんて言うなよ! 俺たちはいつ死んでもおかしくねぇリングに上がって、生きて生きて生きてリングを下りなきゃいけねぇんだろうが!

 死んでもいい覚悟なんて捨ててしまえ! 死んでもいい覚悟なんていらねぇんだよ。そうすれば、お前はもっと強くなる」

 その気持ちが生まれたきっかけは2009年11月20日、後楽園ホールで行われた伊東竜二(大日本プロレス)との一戦だった。ZERO-ONE在籍時に、大日本のエースとなった伊東から対戦相手として指名されるも、小腸に腫瘍が見つかり欠場を余儀なくさた。大病から復帰したものの、今度は両膝の靭帯を断裂してしまう。一方の伊東も重症を負い対戦は宙に浮いてしまった。

「あのときはコンディション悪くて引退も視野に入れてました。なんせプロレスだけじゃ食えなくてラブホテルで清掃のバイトをしていたんです。朝5時まで働いて、家帰って少し仮眠してから試合へ行くみたいな生活してて。こんな生活続けててもしょうがねえな。 引退するしかないんじゃないかなって、自分で思ってる時に実現した試合なんですよ。どうせ引退するなら伊東竜二とがっちりデスマッチやってから引退しようと思っていたんです。

   でも実際に試合やったらめちゃくちゃ楽しくて。自分がプロレスとデスマッチを失ったらホントの意味で廃人になっちゃうなって思ったぐらいでしたね」

 この試合は蛍光灯、サボテン、画鋲、パイプ椅子が飛び交い二人はおびただしい量の血を流した。クライマックスは高さ6メートルある後楽園ホールのバルコニーからのダイブ。葛西のダイブが机の上に寝転ぶ伊東に決まって勝利。この死闘は東京スポーツが制定する「プロレス大賞」で年間最高試合賞を獲得し、葛西はプロレス界の歴史に名前を刻んだ。

 この試合の後から葛西は「生きてリングを降りるのがプロの仕事」と思うようになった。

「デスマッチって死の試合ですけど、スタントマンとか登山家でもそうじゃないですか。

 生きて帰ってくるからかっこいいんだって。俺らもそうなんだよ。死ぬかもしれない、 大怪我するかもしれない状況に飛び込んでって、死ぬのは素人の兄ちゃんでもできる。でも生きて帰ってくるから俺らは かっこいいし、称賛されるんだなって気づいたんです」

   プロレス観が変わっても葛西の試合は変わらない。いつでもイケイケドンドンのままだ。しかし試合に対する見方は変わった。あれだけ嫌がっていたコミカルな試合も受け入れるようになったという。

 「葛西はコミカルやらせても面白いよなって評価をいただいて、オファーしてくる団体さんも結構あるんですよ。だからコミカルを求められて上がったリングではやりますよ。とことんお客さんを楽しませます」

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篁五郎

たかむら ごろう

1973年神奈川県出身。小売業、販売業、サービス業と非正規で仕事を転々した後、フリーライターへ転身。西部邁の表現者塾ににて保守思想を学び、個人で勉強を続けている。現在、都内の医療法人と医療サイトをメインに芸能、スポーツ、プロレス、グルメ、マーケティングと雑多なジャンルで記事を執筆しつつ、鎌倉文学館館長・富岡幸一郎氏から文学者について話を聞く連載も手がけている。

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