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自民党の変貌が日本の政治・マスメディアにあたえた影響とは!?

ベスト新書15周年フェアの1冊、『変貌する自民党の正体』(田原総一朗著)が6月9日発売!自民党の裏の裏まで知り尽くした田原総一朗による自民党論。

「角栄ブーム」は現政権への批判の裏返しか!? 『変貌する自民党の正体』(ベスト新書)を上梓。自民党政治の裏の裏まで知り尽くしたジャーナリスト・田原総一朗に話を聞いた。

 

 私が若い頃、新聞やテレビの政治記者たちは与党である自民党の取材に夢中で、野党などにはほとんど関心を持っていなかった。

写真:永井浩

 かつての自民党には主流派と反主流派、非主流派が存在して党内で激しい政策論争を展開しており、その政策論争の取材こそ意味があり、面白かったからである。それは生半可ではない凄まじい論争で、論戦に敗れて交代した首相も少なからずいる。
 ところが、選挙制度が小選挙区制に変わってから、執行部が推薦する人物でなければ立候補できなくなり、反主流派も非主流派もなくなった。そして、安倍官邸の意見がストレートに通るようになってしまったのだ。
  その結果、集団的自衛権の行使について、安倍首相や中谷防衛相は自らが表明したことを後に国会で否定するという失態を繰り返すことになった。かつての自民党であれば、与野党間の論争どころではない激論が事前に党内で戦わされていたため、こんな失態を露呈することはなかったはずである。

■マスメディアが弱体化している

  それを厳しく追及できない野党もだらしがないが、さらに私も一員であるマスメディアが弱体化していることも指摘しておかなければならない。
 フランスの首都パリに本部のある「国境なき記者団」というNGO(国際協力の民間団体)が16年4月、世界180か国を対象に「報道の自由度ランキング」を発表したが、日本はなんと72位であった。イギリスが38位、アメリカが41位、フランスが45位、韓国でさえ70位である。
 このNGOが、日本に偏見を持っているわけではない。2010年、鳩山内閣のときに日本は11位、野田内閣の12年には22位であった。ところが、安倍内閣になった13年に53位まで急落し、以後、59位(14年)、61位(15年)、そして72位と順位を落としているのである。

 この事実を裏づけるように、安倍内閣になってから自民党のマスメディアに対する干渉が露骨になっている。
 たとえば、総選挙の直前だった14年11月には、自民党がNHKと在京民放5社の報道局長に選挙報道の公正中立を要請する文書を渡した。
 こんなことがあれば、本来ならば、在京の報道局長が集まって協議し、自民党に抗議すべきである。ところが、ほとんどのテレビ局が抗議どころか、こういう事実があったことすら報道しなかった。ちなみに、私は「朝まで生テレビ」でこのことを報告している。
 16年の2月には、高市早苗総務相が「政治的な公平性を欠く内容を繰り返したと判断した場合、その局に対する電波停止がありうる」と発言した。
放送法第4条に「政治的に公平であること」「報道は事実を曲げないですること」などが記されているが、これらはあくまで倫理規定である。日本国憲法21条により、言論・出版その他一切の表現の自由は保証されており、これが先行する。その意味では、高市発言は憲法違反である。

 だから、当然のことだが、高市発言についてもテレビ局は報道するとともに抗議すべきであったのに、ほとんどの局はその事実すら報じなかった。
 実は、国境なき記者団の発表があったのと同じ時期に、表現の自由に関する国連特別報告者でカリフォルニア大学アーバイン校教授のデービッド・ケイが来日した。ケイ氏は少なからぬジャーナリストたちに聞き取り調査をし、「日本の報道機関の独立性が深刻な脅威に曝されていることを憂慮する」と表明している。
 自民党が豹変し、開かれた政党でなくなった。一強多弱の政治状況のなかで、野党がこれにきちんと対応できない。しかも、マスメディアが弱体化している。
 まさに、日本の報道機関の独立性が深刻な脅威に曝されている。私もそう思わざるをえないのである。
 

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田原 総一朗

たはら そういちろう

ジャーナリスト。1934年滋賀県生まれ。60年早稲田大学文学部卒業。同年岩波映画製作所入所。64年東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数。著書に『日本の戦争』(小学館)、『塀の上を走れ 田原総一朗自伝』講談社)、『安倍政権への遺言 首相、これだけはいいたい 』(朝日新聞出版)など多数の著書がある。


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