私たちの社会はいつまで「結婚」を守り続けるのか
少子化時代にふさわしいパートナーシップとは
まったく標準的ではない「標準家庭」
今日、同性婚、夫婦別姓など、結婚という制度をめぐって再考を促される機会が多い。
そんななか、さきごろ、婚活サポートコンソ―シアム主催の「少子化・未婚化時代におけるパートナーシップのあり方」をめぐるシンポジウムが行なわれた。 結婚を考えるうえで、示唆に富む内容が多かったので、その内容を紹介したい。
まず、基調講演を行ったIBJ社長・石坂茂氏は、これほど少子高齢化と騒がれながら、この問題についての知識が社会に共有されていないことを指摘。 少子化の解決というとすぐに婚姻数をどう増やしていくか、という話になりがちだが、「かつてと結婚を取り巻く状況が変わるなか、盲目的に結婚を目指すことがどれほど困難か……結婚という制度を固定して考えないことが重要」と述べた。
確かに、日本では結婚をめぐる観念は強固だ。同性カップルは結婚できないし、夫婦は同姓でなければならない。 さらに出産・育児と結婚はセットになって考えるのが一般的。結婚する人が減ったから子どもが減ったのだ、という論理は強固に存在している。
だから、子どもを増やすためには、結婚するカップルをいかに増やすか、ということが課題となる。そうした日本の事情は2.1%という主要国のなかで最低の婚外子率からも窺える(2008年)。我が国では、子どもは結婚した男女のカップルがつくるもの、なのだ。
基調講演につづいて、有識者によるシンポジウムが行なわれた。ここでも日本社会に深く根を下ろした「標準家庭」の強固さが話題にされた。
パネリストのひとり、計量社会学を専門とする筒井淳也氏(立命館大学産業社会学部教授)は、いくつかの興味深いデータを提示する。
例えばそのうちのひとつ。しばしば日本で標準的とされる家庭像、すなわちお父さんが働き、お母さんは専業主婦、子どもは二人……といった家族がマジョリティになったことはないという。
専業主婦がいる家庭は、その数がもっとも多かった1970年代でさえ、全体の半数を超えてはいないそうだ。
「専業主婦時代は他国よりも極端に短かったにもかかわらず、強烈な「標準家庭」になった。そして、標準家庭が作れなければ結婚できないと思い込むようになった」と述べる。
同じくパネリストの名取はにわさん(日本BPW連合会理事長、元内閣府男女共同参画局長)も、「(『標準家庭』を念頭に設計された制度が)制度疲労を起こしている。標準家庭がまったく標準ではなくなってからずいぶん経つのに、行政の動きは本当に遅い」と嘆く。