インプットは割りが悪い【森博嗣】新連載「日常のフローチャート」第1回 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

BEST TiMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ

インプットは割りが悪い【森博嗣】新連載「日常のフローチャート」第1回

森博嗣 新連載エッセィ「日常のフローチャート Daily Flowchart」連載第1回


森羅万象をよく観察し、深く思考すること。そこに新しい気づきを得たとき、日々の生活はより面白いものになる――。森博嗣先生の新連載エッセィ「日常のフローチャート Daily Flowchart」。人生を豊かにする思考のツール&メソッドがここにあります。 ✴︎連載エッセィ「日常のフローチャート Daily Flowchart」がついに単行本化され発売に! 総頁数:344頁。未公開の書き下ろし原稿(第36〜40回)も収録。視点が変わると、人生も変わる!あなたにとって大切な一冊になるとお約束します!


 

 

第1回 インプットは割りが悪い

 

【日常のルーチン】

 

 朝起きたとき、あなたは何を考えるだろうか? なにも考えない? そういう人もいる。僕の奥様(あえて敬称)がそのタイプだ。僕は違う。目が覚めて、時刻を確認したあと、15分くらいベッドで横になったままあれこれ考える。それは、今日何をするか、どういう手順でどのように活動するか、と思いを巡らす。もちろん、だいたいは決まっていて、前日かそれ以前に考えてあるので、ほぼ予定どおりのことも多い。それでも、その日の天候や、自分の体調や、気分などで細かい点を変更する。

 やることが決まっていても、どう動けば効率的に進められるか、また、なにか見逃していることはないか、どんな点に注意をして動けば良いか、など視点を変えて、もう一度検討しておく。ようするに、それくらい心配性なのだろう。

 それらがまあまあまとまったところで、「さて、では起きようか」と躰を動かす。最初にすることは、ベッドの横で寝ていた犬を庭に出してやること。ドアのところで待っていると、彼は1分ほどで戻ってくる。

 それから、温かいミルクティーを淹れて、書斎へ行き、パソコンの前に座る。24インチディスプレィ2機が起動し、30分くらいは世界の様子を見て回る。ちなみに、このミルクティーは少しずつ飲んで、飲み終わるのは夜である。途中にコーヒーを3度くらい淹れて飲むから、ミルクティーは朝と夜(夜にはもちろん冷めている)に分けて1カップを飲む習慣。

 ばりばり仕事をしていた頃には、朝30分くらいで30通ほどメールを発信した。仕事関係のリプラィがほとんど。当時は1日に200通はメールを出していた。仕事の半分はメールを書くことだったといえる。今は仕事関係のメールはほぼゼロなので、1日に5通も出さない。とにかく、仕事を減らすことに尽力してきたここ10年間である。

 朝は犬の散歩が一番大事なイベントだ。担当の1匹を連れていくのだが、最近どういうわけか奥様がついてくるようになった。ウォーキングをしてダイエットしようとしているものと推測されるが、もちろん理由を尋ねるほど勇敢ではない。

 犬の散歩は夕方にもう1回ある。それまでの間は、庭仕事、工作、どこかの修繕、ネット散策、読書、ドラマか映画鑑賞、短距離ドライブ、車の整備、といったところ。だいたいこれで日々過ごしている。作家の仕事はほとんどしていない。

次のページインプットとアウトプット

KEYWORDS:

✴︎森博嗣 最新珠玉のエッセィ✴︎

日常のフローチャート Daily Flowchart

✴︎絶賛発売中✴︎

 

[caption id="attachment_3661533" align="aligncenter" width="525"] ※カバー画像をクリックするとAmazonにジャンプします[/caption]

 

連載エッセィ「日常のフローチャート Daily Flowchart」がついに単行本化され発売に! 総頁数:344頁。未公開の書き下ろし原稿(第36〜40回)も収録。視点が変わると、人生も変わる!あなたにとって大切な一冊になるとお約束します!

 

「無事」を重ねることが、人生の成功である。少し気をつけていれば、誰でもできる。ときどき予期せぬ不運が襲ってきても、また少しずつ無事を重ねて挽回していけば良い。勝たなくても良い。負けても良い。またの機会を待てることこそが、成功の価値なのである。(第35回「充実した人生に唯一必要なもの」より抜粋)

 

◉人生はプログラミング◉水を差しにくい社会◉話し上手と書き上手

◉老人になっても社会人である◉余計なものを持つことの価値

◉気持ちという質量◉「潔癖社会」純度上昇中◉ジェネラリストは存在しない?

◉どうなれば成功なのか?◉適度な自己中のすすめ◉アイデアを思いつける人

◉思いつきの手法◉新しい価値は無駄から生まれる◉頭は知識で肥満になる

◉楽しければそれで良いのか?◉効率か快適か、それが問題だ

◉自己利益が最重要な方針◉作るために必要なこと

◉一人でいることは、自由の象徴◉充実した人生に唯一必要なもの

◉AIが活躍する未来って?◉的確な質問をする能力

◉ネットのモラルはこれから◉フィクションを楽しむ条件

◉いつ死んでも良い生き方とは etc.

オススメ記事

森博嗣

もり ひろし

1957年愛知県生まれ。工学博士。某国立大学工学部建築学科で研究をするかたわら、1996年に『すべてがFになる』で第1回「メフィスト賞」を受賞し、衝撃の作家デビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか、「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、また『The cream of the notes』シリーズ(講談社文庫)、『小説家という職業』(集英社新書)、『科学的とはどういう意味か』(新潮新書)、『孤独の価値』(幻冬舎新書)、『道なき未知』(小社刊)などのエッセィを多数刊行している。

 

この著者の記事一覧

RELATED BOOKS -関連書籍-

道なき未知 Uncharted Unknown
道なき未知 Uncharted Unknown
  • 森 博嗣
  • 2017.11.16
馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow (講談社文庫 も 28-84)
馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow (講談社文庫 も 28-84)
  • 森 博嗣
  • 2023.07.14
君が見たのは誰の夢? Whose Dream Did You See? (講談社タイガ モ-A 17)
君が見たのは誰の夢? Whose Dream Did You See? (講談社タイガ モ-A 17)
  • 森 博嗣
  • 2023.04.14