大局観のないリーダーの特徴は〝読書量が足りない〟 本屋こそ日本の文化と精神の拠点(『本屋を守れ 読書とは国力』藤原正彦著)【緒形圭子】
「視点が変わる読書」第6回 本屋こそ日本の文化と精神の拠点〜『本屋を守れ 読書とは国力』藤原正彦著
何が起きるか予測がつかない。これまでのやり方が通用しない。そんな時代だからこそ、硬直してしまいがちなアタマを柔らかくしてみませんか? あなたの人生が変わるきっかけになってしまうかもしれない・・・「視点が変わる読書」。連載第6回は、藤原正彦著『本屋を守れ 読書とは国力』を紹介します。
「視点が変わる読書」第6回 本屋こそ日本の文化と精神の拠点
『本屋を守れ 読書とは国力』藤原正彦著(PHP新書)
先日、家の最寄り駅近くのコンビニで買い物をしていて、そういえばここは以前書店だったなとふと思った。
店先に子供向けのマンガ雑誌が積まれ、中に入ると左手に雑誌の棚、中央には文庫本の棚が並び、新刊の単行本は台に平積みされている、典型的な町の書店だ。いつ行ってもお客さんがいて、思い思いに本や雑誌を選んでいた。
閉店したのは5、6年前であったと記憶している。ここ10年ほどで近隣の町の本屋は次々に閉店し、コンビニ、ドラッグストア、ファストフード店などに変わってしまった。
統計によれば、1980年代に全国で25,000軒あった本屋は現在半減しているという。これからもっともっと少なくなるだろう。
1964年生まれの私にとって、町の本屋は遊び場といってもいい存在だった。小学校に上がる頃には一人で本屋に行って、欲しい本を物色し親にねだって買ってもらったり、漫画を立ち読みしたりした。鷹揚な時代で、マンガはビニールカバーでおおわれておらず、好きなだけ読むことができた。店主も立ち読みしている子供を怒ったり、追い払ったりしなかった。
今、子供たちはどういう形で本と触れ合っているのだろうと、幼稚園児の男子を持つ知り合いのMさんに聞いてみた。
「家の近くのショッピングモールに蔦屋があるので、子供を連れてよく行きますよ。好きな本を買ってあげるよというと、トミカやプラレールの図鑑とか、とにかく車と電車の本ばかり選ぶんですよ。仕方がないので物語絵本は私が選んで買ってます」
なるほど。ショッピングモールの本屋か。そういえば近所のコーナンの中にも大型書店が入っている。だだっ広くて私は馴染めないけれど、親子連れはそういうところで本を買うのか。
子供を連れてよく本屋に行くという言葉にほっとしながらも、いやいや待てよと思った。Mさんはかつて出版社で編集の仕事をしていた上にお父さんは読書家で知られるテレビのプロデューサーだ。中学生の時にお父さんから、シュテファン・ツヴァイクの『権力とたたかう良心』(フランスの宗教改革者カルヴァンに立ち向かったカステリオンの闘いを描いている)を読めと強要されたという話を聞いて驚いたことがある。
そんな彼女が読書への意識が高いのは当然だが、他のお母さんたちはどうなのだろうと、ママ友の話を聞いてみた。
「子供に本を読ませたいという母親は多いですよ。赤ちゃんの時から図書館や本屋に連れて行って本に親しませているという話を聞きました。自分が本を読んでこなかったからこそ、子供には本を読む習慣をもってもらいたいというお母さんもいますし、今はまだ興味がなくてもいずれ興味をもって自分から手を伸ばしてくれるかもしれないと、色々なジャンルの本を書棚に並べているお母さんもいます」
おお! 日本もまだまだ捨てたもんじゃないぞ!
「自分から本に手を伸ばす子供を育てる」、これこそ、『本屋を守れ』では力説されているのだ。
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