大食いと早食い【新保信長】「食堂生まれ、外食育ち」45品目
【隔週連載】新保信長「食堂生まれ、外食育ち」45品目
優勝は25杯を食べた男性だった。15杯ぐらいまでいく人はそこそこいたものの、25杯はレベルが違う。私は知らなかったが、板谷さんによるとフードファイターの誰かだったらしい。プロが地域のイベントに出てくるなよとも思ったが、当時は早食いバトルを真似た中学生が窒息死した事件の影響で大食い番組が自粛されていた時期で、賞金稼ぎのために参加していたのかもしれない。
新卒で入った会社を辞めてからもう35年以上になる。幸い今も編集・ライターとして仕事ができているが、フードファイターはどうなのだろう。体力勝負という点では、もちろんプロ野球も厳しい。学生時代に一升チャーハンを完食した猪俣隆のプロ通算成績は、実働9年で43勝63敗3セーブ、防御率3.68。微妙な数字ではあるが、暗黒時代の阪神タイガースにあって、93年には11勝しているのだから立派なものだ。引退後はなぜかアメリカで寿司職人となり、2017年の時点ではワシントン近郊の寿司屋で働いていたらしい。
ちなみに、K飯店のほうは今も健在。ジャンボ餃子は、チャレンジじゃなくても予約して料金を払えば制限時間なしで何人がかりで食べてもいいらしい。機会があれば、週刊誌時代の同じ班だった連中を誘って行ってみたい。食べ切れなくても無限に食べ続ける彼女がいれば大丈夫……なはずである。
文:新保信長
✴︎連載50回分が待望の書籍化『食堂生まれ、外食育ち』、絶賛発売中!
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✴︎KKベストセラーズの7月新刊✴︎
新保信長 著『食堂生まれ、外食育ち』
作家・平松洋子さん推薦!!
「気配をスッと消し、食の現場をニヤリと斬る。
選ばしし外食者の至芸がすごい。」
外食歴50年超の著者が綴る異色の外食エッセイ!
一口に「外食」と言っても、いろんなシチュエーションがある。子供の頃に親に連れていかれたデパートの大食堂。夜遅く仕事帰りに一人で入る牛丼屋。ここぞというデートや記念日に予約して行ったレストラン。気の置けない仲間と行く居酒屋。たまの贅沢のカウンターの寿司屋。出先でたまたま入った定食屋。近所のなじみの中華屋や焼き鳥屋……。
誰もが心当たりあるような懐かしくも愛しき「外食の時空間」への旅が始まる!
カバー&本文イラスト描いたイラストレーターおくやまゆかさん。
イラストが最高に愉快!(全50点収録)
目次
序 「今日のごはん何?」と聞いたことがない
第1章 ノスタルジア食堂
1品目|外国人と鴨南蛮と中華そば
2品目|ランチタイム地獄変
3品目|「天丼」と「うどん天」と「シマ」
4品目|出前とデリバリー今昔物語
5品目|おでん定食というギャンブル
6品目|ハンバーグ記念日
7品目|おいしい味噌汁の条件
8品目|最高のおやつ
9品目|校外学舎の悲しき夕食
10品目|わんこスイカ
11品目|ところ変われば品変わる
12品目|「恵方巻」と「丸かぶり」
13品目|ちくわぶとはんぺん
14品目|「肉じゃが=おふくろの味」って誰が決めた?
15品目|スマホがなかった時代
16品目|Gに気をつけろ!
第2章 私が通りすぎた店
17品目|あの素晴らしい寿司屋をもう一度
18品目|気まぐれすぎる女将
19品目|選択肢のない店
20品目|日本一大きいビアガーデン
21品目|カニ・マイ・ラブ
22品目|国会図書館でナポリタンを
23品目|夫婦の肖像
24品目|サハリンの夜
25品目|インドで大炎上
26品目|開幕前の至福の宴
27品目|私がスポーツジムに通う理由
28品目|かわいそうな寿司屋とその弟子
29品目|残業メシ格差
30品目|よそンちの食卓はつらいよ
31品目|大食いと早食い
32品目| BGMも味のうち?
第3章 外食の流儀
33品目|大盛りはうれしくない
34品目|取り皿問題
35品目|デザート嫌い
36品目|お熱いのはお好き?
37品目|器のTPO
38品目|あんまり尽くされても困る
39品目|スパゲティがパスタに変わった日
40品目|何をかけるか問題
41品目|どの席に座るか問題
42品目|酒飲み認定
43品目|11人きた!
44品目|硬と軟
45品目|人はだいたい同じものを注文する
46品目|トングどっち向きに置く?
47品目|箸と愛国
48品目|ステキなタイミング
おわりに 入れなかったあの店の話