目に見えるものだけが全てではない 『フロッグマン戦記 第2次世界大戦米軍水中破壊工作部隊』に描かれた真実【緒形圭子】 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

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目に見えるものだけが全てではない 『フロッグマン戦記 第2次世界大戦米軍水中破壊工作部隊』に描かれた真実【緒形圭子】

「視点が変わる読書」第8回 『フロッグマン戦記 第2次世界大戦米軍水中破壊工作部隊』アンドリュー・ダビンズ著

  

◾️フロッグマン(蛙男)たちの存在が浮上するのはいつの日か

 

硫黄島の戦いといえば、アメリカと日本双方の視点から描いたクリントイーストウッド監督の映画『父親たちの星条旗』と『硫黄島からの手紙』が有名だ。

 どちらの映画も、アメリカ軍と日本軍の戦闘シーンを詳細に描いているが、そこにUDT隊員たちの姿はない。敵弾が降り注ぐ中、半裸で海中を泳ぎ(この頃はまだウエットスーツがなかった)、調査をしたり、障害物を破壊したりするフロッグマン(蛙男)たちは存在そのものがかき消されているのだ。

 

 読了した後、私はしばらく呆然としていた。

 これまで、とても大切なことを知らずに生きてきたような気がした。

 目に見えるものだけが全てではない――。

 きっとこの本はいつか映画化されるだろう。その時、初めてフロッグマンたちは公の場に姿を現す。そして以降の第二次世界大戦の戦争映画には必ず彼らが登場するようになるに違いない。

 

文:緒形圭子

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緒形圭子

おがた けいこ

文筆家

1964年千葉県生まれ。慶應大学卒。出版社勤務を経て、文筆業に。

『新潮』に小説「家の誇り」、「銀葉カエデの丘」を発表。

紺野美沙子の朗読座で「さがりばな」、「鶴の恩返し」の脚本を手掛ける。

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