気持ちという質量【森博嗣】新連載「日常のフローチャート」第14回 |BEST TiMES(ベストタイムズ)

BEST TiMES(ベストタイムズ) | KKベストセラーズ

気持ちという質量【森博嗣】新連載「日常のフローチャート」第14回

森博嗣 新連載エッセィ「日常のフローチャート Daily Flowchart」連載第14回

 

【ジャイロモノレールが話題に?】

 

 編集者が知らせてきた。NHKの番組で自著『ジャイロモノレール』(幻冬舎新書)が画面に出たという。キックスケータを綱渡りさせる競争だったとかで、この本が参考にされたらしい。その影響で本が売れています、と伝えてきたけれど、まあ、数は知れているはず(この方面では心の質量が大きい)。

 本の内容を理解すれば、誰でも実現できる技術であり、再現性が認められるからこそ本に書いた。ただし、ちょっと残念に思ったのは、速度を競うルールだったことだ。本来、長く安定を維持するものが高性能なので、ゆっくり走れる方が優秀なのは自明。落ちないでいられる時間か到達距離を競うルールにする方が技術的意味がある。科学的センスのある誰かが、この点をもう指摘しただろうか?

 

雪が積もった庭園を犬と散策。一日中氷点下だから、水はない。水がないと、犬が汚れないので助かる。雪の日はとにかく暖かい。暖かい冬ほど雪が降る。

 

文:森博嗣

 

KEYWORDS:

 

✴︎森博嗣 新刊『静かに生きて考える』発売忽ち重版!✴︎

 

 

森博嗣先生のBEST T!MES連載「静かに生きて考える」が書籍化され、2024年1月17日に発売決定。第1回〜第35回までの原稿(2022.4〜2023.9配信、現在非公開)に、新たに第36回〜第40回の非公開原稿が加わります。どうぞご期待ください!

 

 

 世の中はますます騒々しく、人々はいっそう浮き足立ってきた・・・そんなやかましい時代を、静かに生きるにはどうすればいいのか? 人生を幸せに生きるとはどういうことか?

 森博嗣先生が自身の日常を観察し、思索しつづけた極上のエッセィ。「書くこと・作ること・生きること」の本質を綴り、不可解な時代を見極める智恵を指南。他者と競わず戦わず、孤独と自由を楽しむヒントに溢れた書です。

 〈無駄だ、贅沢だ、というのなら、生きていること自体が無駄で贅沢な状況といえるだろう。人間は何故生きているのか、と問われれば、僕は「生きるのが趣味です」と答えるのが適切だと考えている。趣味は無駄で贅沢なものなのだから、辻褄が合っている。〉(第5回「五月が一番夏らしい季節」より)。

オススメ記事

森博嗣

もり ひろし

1957年愛知県生まれ。工学博士。某国立大学工学部建築学科で研究をするかたわら、1996年に『すべてがFになる』で第1回「メフィスト賞」を受賞し、衝撃の作家デビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか、「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、また『The cream of the notes』シリーズ(講談社文庫)、『小説家という職業』(集英社新書)、『科学的とはどういう意味か』(新潮新書)、『孤独の価値』(幻冬舎新書)、『道なき未知』(小社刊)などのエッセィを多数刊行している。

 

この著者の記事一覧

RELATED BOOKS -関連書籍-

静かに生きて考える
静かに生きて考える
  • 森博嗣
  • 2024.01.17
道なき未知 (ワニ文庫)
道なき未知 (ワニ文庫)
  • 博嗣, 森
  • 2019.04.22
何故エリーズは語らなかったのか? Why Didn’t Elise Speak? (講談社タイガ モ-A 18)
何故エリーズは語らなかったのか? Why Didn’t Elise Speak? (講談社タイガ モ-A 18)
  • 森 博嗣
  • 2024.04.12