ポケモンカード欲しさに親の財布から1万円盗んだ小3の息子 どうやって俺は子供と向き合ったか?【村橋ゴロー】
俺もそうだった。俺も親の財布からよー金を抜いていた。おふくろのがま口、おやじの長財布、そしてウチは商売をしていたので現金のたんまり入ったレジ。そこかしこにゲンナマがあり、小3ぐらいから高校生になるまで、よーパクった。罪悪感はあるにはあったが、それよりも「何とかしなきゃ」という思いのほうが強かったと記憶している。欲しいものはあるが親は買ってくれない。まだ小学生で金を稼ぐ術はない。で、見渡せば家のなかにはお金がそこかしこにある。だからそれを盗る。だから「盗む」というより、「補充する」感覚が強かった。しかも「やむにやまれず」という自身への言い訳つきで。
ひるがえって、我が愛しの息子である。彼は都会っ子で品川区に住んでいる。周りの友達はタワマン族が多く、そのアッパーな暮らしを目のあたりにしている。ウチは貧乏ではないが、5000円も6000円もするポケモンカードを、ほいほい箱買いしてあげる余裕はない。そんな環境において、息子も「やむにやまれず」「補充」しただけなのだろう。彼はタワマン族の友達と、そのマンションでよく遊んでいる。「あそこのロビー、フリーWi-Fiがあるから友達とSwitchで遊べるんだよね」。「あそこの空き地広いから、野球できるんだよね」と言っていた俺とは大違いである。タワマンの豪奢なソファーや調度品が置かれたロビーで遊んでいる息子からしたら、そりゃ何につけお金が必要になってくるわな。
いや、そんな理解を示している場合じゃないんだよ、俺氏。あんたの息子が、あんたの財布から金を抜いたんだ。それ相当の説教をしないと、愛しい息子が足を踏み外してしまうよ。そうだ、俺は親だったんだ。慌てて今回のことを息子に諭そうと、文言を頭に浮かべた。何て叱りゃいいんだ? 感情的に怒るのではなく、いかに説教すれば彼の心に響くのか。さめざめと泣いて反省してくれるのか……わからん、そんなん知らん!習ったことない! とりあえず「親の金を盗む 𠮟り方」とググってみた。こっち(親)だって必死なのだ。えらいもんでスマホは回答例を示してくれたが、ピンとこない。AIのくれた答えをパクるのをやめ、息子と向き合った。