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「君はアントニオ猪木なんだから」大ブーイングを浴びてきた棚橋弘至を支えたスタッフの一言【篁五郎】

写真:棚橋弘至選手のXより引用

 

◾️「社会人1年生の気持ちで」棚橋社長が抱く夢

 

 そして現在。新日本プロレスリング株式会社の社長に就任した棚橋は、忙しい日々を送っている。試合がないときは出社し、業務の合間にトレーニング。試合がある日は反対にリモートで業務をこなす。どんな心境なのか。

「僕は大学卒業してすぐに新日本プロレスに入門しました。プロレスラーは周りの人が気を使ってくれるので、一般的な社会常識や、挨拶の仕方、TPOに応じた対応を学んでこなかった。その部分を埋められるよう社会人1年目の気持ちで頑張っています」

 そして現役レスラー社長の立場をフル活用している。

 「コロナ禍で落ち込んだ業績を戻すのは当然ですけど、現役レスラーでありながら社長というのを最大限に生かしたい。例えば法人営業もそうですけど、棚橋を使える商談とかあったら是非声をかけて欲しいですね。僕自身が企業さんへ『スポンサーお願いします』とご挨拶しますし、新日本プロレスはSNSのインプレッションがこれくらいあって、どの世代にどれくらいのファン層を抱えていて、協賛企業様のプラスになりますというところをお伝えできると思います。だから社長業も100%、プロレスラーも100%でやっていきます」

  棚橋は社長になって新しい夢を抱いている。それは就任会見で語った3つの公約だけではない。

  「夢は、都内にプロレスの常設会場を持つことです。もちろん後楽園ホールというメッカがありますけど、業界の規模を大きくしていくためには、1大会の動員数を増やさないといけないという思いがありますので、そういう会場をつくりたい。

 新日本プロレスが使用していないときは他の団体さんへ貸し出したり、音楽や演劇の会場としても使用してもらったりするような。そんなアリーナがつくれたら、周りに飲食店や色んな施設ができて、さらに良い影響が与えられるんじゃないかと」

 現役レスラー社長として汗を流す棚橋は今年48歳。氷河期世代真っ只中である。そんな棚橋に同世代へのメッセージをお願いした。

  「人生は不思議なバランス感覚に支配されています。これはもう神様の仕業なんじゃないかなと思うんです。何でもバイオリズムがあって、いいときもあれば、悪いときもある。僕はね、死ぬときはプラスマイナスゼロになると思うんです。

 例えば青春時代とか、氷河期を経験した人間は、これからいい時期が待っている。これからプラスの時期が来ると思います。40、50過ぎて、どうかと思うときはあるんですけど、これから人生でいい時を迎えると思って生活してほしいですね。

 いいときと悪いときの平均値で通ったら、プラマイゼロで終わる人生の方が素敵じゃないですか。だからこれからいいことばっかりが待ってるよっていうマインドで生活していきましょう」

  棚橋弘至にも苦しい時期があった。しかし彼は、少しずつ努力を積み重ねてきて乗り越えた。いい時期には、驕り高ぶらずリング上で愛を叫び続けた。太陽として雨と戦い続けて新日本プロレスの象徴となった。それが今の姿である。かつて「太陽のエース」と呼ばれた逸材は、今でもプロレス界を更に飛躍させるべく新しいステージで奮闘中だ。

 

文:篁五郎

 

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篁五郎

たかむら ごろう

1973年神奈川県出身。小売業、販売業、サービス業と非正規で仕事を転々した後、フリーライターへ転身。西部邁の表現者塾ににて保守思想を学び、個人で勉強を続けている。現在、都内の医療法人と医療サイトをメインに芸能、スポーツ、プロレス、グルメ、マーケティングと雑多なジャンルで記事を執筆しつつ、鎌倉文学館館長・富岡幸一郎氏から文学者について話を聞く連載も手がけている。

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